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営業戦略とは?戦術との違いや戦略の立て方、フレームワークについて解説

営業戦略とは?戦術との違いや戦略の立て方、フレームワークについて解説

営業戦略とは

営業戦略とは、営業活動によって効率よく売上を伸ばすための方針のことです。

「新規顧客の獲得を強化する」「リピーターの育成に力を入れる」「Web積極的に活用していく」など、営業活動全体の方針を営業戦略と呼びます。

戦略と戦術の違い

営業戦略の意味を理解する上で知っておきたいのが、「戦略」と「戦術」の違いです。戦略が全体の方針であるのに対して、戦術はより具体的な1つ1つの施策のことです。

例えば「新規顧客の獲得を強化する」という方針を立て「Web広告を出向する」「取引先からの紹介を促す」などの施策を行なう場合、「新規顧客の獲得を強化する」が営業戦略で、「Web広告を出向する」「取引先からの紹介を促す」という施策が戦術だと言えます。

営業戦略の立て方

過去の実績を分析しデータに基づいて戦略を検討することで、勘や思いつきに頼らない精度の高い営業戦略を構築することができます。そのためには、以下のステップを踏んで戦略立案に取り組みましょう。

  • 営業データから現状を把握する
  • 課題や勝ち筋を見つけ出す
  • 戦略に落とし込む

営業データから現状を把握する

戦略を立てるうえで最初にやるべきなのは、データによる現状の把握です。

営業活動で取得できるデータはとても重要です。図表1における一番右側の「購入・取引」や「リピート」といったいわゆる取引実績(取引結果)はもちろん重要なのですが、その前段階の「比較検討」部分、ここが営業活動に当りますが、この部分もとても重要となります。

図表1 顧客の行動プロセス

なぜなら、この営業活動部分のデータが抜け漏れなく正確に取得できることで、どんな自社の現状を正しく把握し、分析することができるためです。

課題や勝ち筋を見つけ出す

自社データの分析結果から、どんな見込み客が受注に繋がりやすいのかや、各営業担当者の強みや課題を見つけ出していきます。

戦略に落とし込む

課題や勝ち筋が明確になったら、それらを踏まえてどのような手法を強化するのか、どのような顧客にアプローチにしていくのかなど、具体的な営業戦略に落とし込んでいきましょう。

営業戦略の立案事例

ここからは、弊社クライアントでBtoB事業を行なっているE社の営業戦略の立案事例を見てみましょう。

受注率の高い獲得方法を分析する

図表2は顧客獲得方法別の商談件数や受注件数、受注金額の構成比になります。

図表2 顧客獲得方法別の商談件数/受注件数/受注金額構成比

また、図表3は顧客獲得方法別の商談数と受注数、そして受注率および受注1件当りの平均受注金額になります。

図表3 顧客獲得方法別の商談および受注状況

受注率の高い獲得方法を知ることはとても重要です。

E社においては商談件数のうち半数を既存顧客のアップセルが占め、かつ受注率も高く、E社においては既存顧客が売上の基盤をつくっていると言えるでしょう。実際売上全体の4割を既存顧客のアップセルで占めています。

しかしその一方で、既存顧客のアップセルは受注単価が低くなってしまっていること、そして次の図表4のように、とは言えアップセルができているのは顧客全体の半数未満となっている(半数以上の顧客は継続できていない)ということです。

図表4 顧客の継続状況

既存顧客のRFM分析(参考:RFM分析とは?効率的な顧客アプローチを実現する顧客分析)をすることで、継続率の向上や取引頻度や取引金額を上げるための施策へと繋げることで、売上基盤をより強固なものとすることができるでしょう。

分析結果から戦略を検討する

再度図表2、図表3を見てみましょう。

図表2 顧客獲得方法別の商談件数/受注件数/受注金額構成比

図表3 顧客獲得方法別の商談および受注状況

既存顧客のアップセルも重要ですが、E社は既存アップセル以外、要は新規顧客で受注金額の6割程度を占めています。新規顧客もしっかり獲得することがE社にとって重要と言えます。

その新規顧客を獲得する上でも図表3のような分析は有用です。

アライアンス/紹介、HPからの問合せといったインバウンドでの商談と、インサイドセールスや営業担当者自らのアウトバウンドでの商談を比較すると、受注率が大きく異なることが分かります。

営業活動の生産性を最大化するに当って、新規顧客獲得における受注率はとても重要です。

E社の場合、インバウンドでもアウトバウンドでも1社当りの受注金額に大きな差はありません。一方、受注率においては、インバウンドの方がアウトバウンドよりも3倍程度受注率が高いことが分かります。

つまり、アウトバウンドを強化することが営業効率を高める効果的な戦略だと考えられます。

具体的な施策に落とし込む

受注を取るに当って母数である商談の「数」も必要になりますが、E社の場合はインバウンドの方がアウトバウンドよりも3倍程度効率が良いため、例えば商談数を増やすためにインサイドセールスを一人雇用するのに20万円コストをかけるよりも、HPからの問合せを増やすためにWeb広告費用に60万円コストをかけた方が商談数を増やせるのであれば、Web広告にコストをかけた方が営業活動の生産性が高くなる、と言えます。

〈計算方法〉
インサイドセールスの商談1件当りの平均受注金額
= 17.9%×1,051千円 = 188千円
HPからの問合せの商談1件当りの平均受注金額
= 44.6%×1,401千円 = 625千円
※HPからの問合せの生産性は、インサイドセールスの生産性と比較して3.3倍となる

営業活動における顧客獲得方法別の商談数と受注数・受注金額を比較分析することで営業活動に必要なコストの適正配分、投資対効果の最大化を実現できるのです。

次に、図表5は業種別にE社の商談数と受注数、そして受注率を表したグラフとなります。

図表5 顧客の業種別の商談および受注状況

E社の場合は業種別に商談数には大きな違いがあることが分かります。また、受注率にも差があることが分かります。

このような分析をすることで、受注率の高い業種をターゲットとしたランディングページやWeb広告、あるいはリスト化してDM送付など、より効率性の高い営業活動へと繋げることができるでしょう。

他にも自社で取り扱っているサービス別や営業担当者別、またそれぞれの分類のクロスで分析することで、

  • 〇〇業種には■■サービスの受注率が高い
  • 営業担当者▽▽は自身のアウトバウンドでの受注率は低いが既存アップセルの受注率・継続率が高い
  • 新規獲得の受注率が高いのは●●サービスだが、継続している顧客は◇◇サービスを取引する傾向が強い

など、営業活動の生産性を高める具体的な示唆に落し込むことができるのです。

営業担当者の分析で担当者ごとの戦略を検討する

続いて、各営業担当者の分析をしていきましょう。

図表6や図表7は、E社における各営業担当者の日々の活動内容を表したグラフになります。

図表6 営業担当者別の活動内容構成

図表7 新規営業における営業担当者別の活動方法

E社においては営業担当者の主な活動として、

  • 新規営業:初めて商談をする見込み客への営業活動
  • 継続営業:継続して(2回目以上)商談をしている見込み客への営業活動
  • 既存対応:受注した後のサービス提供活動
  • その他

主に4分類の活動になります。また、各活動の方法として、

  • 訪問
  • 来社
  • ビデオ会議
  • 電話アプローチ
  • メールアプローチ
  • リストアップ
  • その他

に分けられます。これらを日々の活動としてデータ蓄積しておくことで、図表6や図表7のように、各営業担当者の行動を可視化することができます。

更に図表8のように各営業担当者の新規営業における活動数と商談数、受注数、受注金額等を比較分析することで、各営業担当者の課題が明確になります。

図表8 各営業担当者の新規営業活動数と商談化率・受注率の比較

※図表43の対象期間は図表41、42とは異なる

そもそもの新規営業にかける活動量が少ないのか、活動しているにも関わらず商談に繋がる割合が低いのか、商談は発生しているにも関わらずなかなか受注に至らないのか、営業の生産性を高めていくためにどこを改善強化すべきなのかが明確になります。

更にそれを図表7でも示したように活動方法別に深掘りしたり、営業先の業種や提案サービス別などのクロスで分析したりすることで、一人一人が「何をすべきか」把握できるでしょう。

アプローチ方法ごとの戦略を検討する

最後にインサイドセールスについてのデータ分析もしましょう。

図表9はインサイドセールスにおける日々のコール数(アウトバウンドコールをした数)、コンタクト数(実際に電話が繋がった数)、アポイント数(アポイントに繋がった数)を可視化したグラフになります。

図表9- ① インサイドセールスにおける時間帯別のアプローチ結果

図表9- ② インサイドセールスにおける曜日別のアプローチ結果

このようなデータ分析をすることで、どの時間帯や曜日にかけることが効率が高いのかが把握できます。他企業も多いと思いますが、E社のインサイドセールス部隊はパート社員が多いです。業務時間が限られている中、いかに効率的にアポイントに繋げるかは重要です。図表9により効率の高いタイミングを把握することで、限られた時間を効率的に活用できるのです。

更にこちらも業種別などクロスで分析することで、ターゲットリストに合わせてアプローチするタイミングを適正化することに繋げることができるのです。

このように営業活動が蓄積されたデータを分析することで、生産性・効率性を最大化するための施策に繋げることができます。

ただしそのためには、営業活動におけるデータを抜け漏れなく正確に蓄積することが重要です。営業管理、顧客管理の仕組みやオペレーションもとても重要になってくるのです。

戦略立案に使えるフレームワーク

この記事では具体的な営業データを分析し、戦略を構築するやり方を解説しましたが、実際はもう少し大きなところから現状を分析して把握することも効果的です。そのような分析に活用できる5つフレームワークを最後にご紹介します。

  • 3C分析
  • SWOT分析
  • 4P分析
  • PEST分析
  • 5フォース分析

3C分析

3C分析とは、顧客、競合、自社の3つの視点からデータを収集し分析することで現状を把握する手法です。Customer(顧客) Competitor(競合) Company(自社)の頭文字をとって3C分析と呼ばれます。

競合分析の目的は自社と競合を比較することなので、競合の分析だけでなく自社の分析も同時に行うことが重要です。あわせて顧客視点からの分析を行うことでより客観的に自社と競合のポジションを明確にすることができます。

参考:3C分析とは?分析の目的とやり方を解説

SWOT分析

SWOT分析とは、自社の現状を「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの項目に整理して分析する手法です。Strengths(強み)、Weaknesses (弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字をとってSWOT分析という名前になっており、読み方は「スウォット分析」です。

3C分析と同じく、自社と競合の現状を比較して分析するためのフレームワークです。「強み」「弱み」という内部環境と、「機会」「脅威」という外部環境に分類して自社の事業を分析することで、客観的に現状を捉えることができます。

  • 強み:内部環境におけるプラスの要因
  • 弱み:内部環境におけるマイナスの要因
  • 機会:外部環境におけるプラスの要因
  • 脅威:外部環境におけるマイナスの要因

内部環境と外部環境、プラスの要素とマイナスの要素に分けて分析することで客観的に現状を把握することができます。

参考:SWOT分析とは?分析から戦略構築までのやり方を解説

4P分析

4P分析とは、商品、価格、流通、販促という4つの視点から企業を分析するフレームワークです。3C分析やSWOT分析において、これらの4つの視点から分析することで自社と競合の比較をスムーズに行うことができます。

Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の頭文字をとって4P分析と呼ばれます。

PEST分析

PEST分析とは自社の事業を成長させるためにプラスに働く外部環境を分析する方法です。「政治」「経済」「社会」「技術」の4つの視点から外部環境を分析します。

  • 政治的要因の例
    • 法律、国や自治体による政策、国内外の政治動向など
  • 経済的要因の例
    • 景気の動向、為替や金利の状況など
  • 社会的要因の例
    • 人口の変化、教育環境、文化、流行など
  • 技術的要因の例
    • 最新技術など

これら4つの視点から自社の事業を成長させるためにプラスに働きそうなものを、書き出してみましょう。Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字をとってPEST分析と呼ばれます。

5フォース分析

5フォース分析と自社の事業を成長させるうえでマイナスに働く外部環境を分析する方法です。「既存の競合他社」「新規参入企業」「代替品」「売り手」「買い手」という視点から分析します。

  • 既存の競合他社
    • 自社と同様の商品を提供している企業の商品力や販売力について分析する
  • 新規参入企業
    • 自社の属する業界は新規参入しやすいかどうか、参入してくる企業があるとしたらどのような企業かなどを分析する
  • 代替品
    • 競合ではないが、代替となる商品にはどのようなものがあるか分析する(たとえば、掃除用品などを扱う企業にとって同じく掃除用品などを扱う企業は競合となりますが、家事代行などのサービスが競合では代替品となります)
  • 売り手
    • 原材料などの仕入先の状況や、自社との関係性などを分析する
  • 買い手
    • 消費者や顧客と自社との力関係などを分析する

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