商品分析 7つの手法 アソシエーション分析/バスケット分析/ABC分析…
多くの企業において、売上の源泉は「商品」です。この「商品」を軸としたデータ分析は、売上を伸ばし事業を成長させるヒントを見つけるうえで非常に役に立ちます。
そこでこの記事では、弊社クライアントの事例なども取り上げながら、商品分析の手法を解説していきます。
目次
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商品分析を行うメリット
ほとんどの企業において陥っていることの一つとして、売筋商品が在庫切れとなってしまい売り逃しを発生させていることと、その一方で死筋商品をいつまでも抱えていてキャッシュ化できない在庫を多く持ってしまっていることです。
この部分をデータ分析し、単品ごとに見える化することにより今後の適切なMD計画や、日々のディストリビューション(値下げ指示、追加発注、商品の店舗間移動)を適切に行うことができるようになります。
商品分析 7つの手法
ここからは具体的に商品視点でのデータ分析に使える手法を解説します。主な商品分析の手法には次のようなものがあります。
- ABC分析
- アソシエーション分析
- バスケット分析
- 売上増減傾向分析
- ランキング分析
- 販売傾向分析
- 売筋・死筋分析
「ABC分析」「アソシエーション分析」「バスケット分析」はマーケティングにおいてよく用いられるフレームワークで、特に「ABC分析」「アソシエーション分析」は商品分析に限らず顧客分析などにも応用される汎用性の高い分析手法です。
「売上増減傾向分析」「ランキング分析」「販売傾向分析」「売筋・死筋分析」は商品視点のデータ分析として弊社でクライアント向けに行っている分析手法です。これら4つの手法については具体的な事例を元に解説します。
ABC分析
「ABC分析」とは、重要度が高く、重点的に管理すべき対象を明らかにするために、A・B・Cという3つのランクに分ける方法で、それぞれのランクに応じて管理方法を選択します。
たとえば、販売管理を行う場合、商品や得意先などに応じてABC分析を行い、販売方法や販促頻度、あるいは売場構成比などを変えていくといった施策を打つ際に使います。
ただし、Aランクだけを重視するというわけではなく、各ランクそれぞれで管理方法を考えることが大切です。一般的には、Aランクが累積売上構成比70%~80%まで、Bランクが累積売上構成比70%(あるいは80%)~90%まで、そしてCランクが累積売上構成比90%~100%です。
たとえば、図表1のような年度別の商品別売上データがあったとします。
図表1 商品別売上データ(年度別)
商品別売上データを、2018年度における売上降順に並べ替えて分析すると、以下のような商品別ABC分析の表やグラフができます。
図表2 商品別ABC 分析(表)
図表3 商品別ABC 分析(グラフ)
上記の表とグラフの場合、2018年度の商品売上高でABC分析を行っていますが、上位5商品で売上全体の80%近くを占めていることがわかります。上記のようにABC分析を行うと、商品の優劣がはっきりするので、どれをテコ入れして販売していくのかがわかるようになりました。
アソシエーション分析
アソシエーション分析とは、2つのものの関係性を分析するフレームワークです。商品データと顧客データ、販売データなどを組み合わせることで「Aという商品を購入している人はBという商品を購入している傾向が高い」といった分析結果を得て、マーケティング戦略に活用されます。
次に紹介するバスケット分析はアソシエーション分析の一種で、商品分析のフレームワークとしてよく活用されます。
バスケット分析
バスケット分析とは、顧客がどのような商品を併売しているのかを分析する手法です。買い物かご(バスケット)の中にどのような商品が一緒に入っているのかを分析することから、バスケット分析と呼ばれます。
バスケット分析は主に「客単価」を高めるために用いられます。既存顧客の併売傾向を分析することで、併売を促す効果的な施策を立案し、1人当たりの購入金額を高めることを目指します。
バスケット分析を使ったマーケティング戦略の立て方は「バスケット分析とは?商品分析でECサイトや店舗の客単価を高める!」で解説しています。
売上増減傾向分析
ここからは実際に弊社のクライアントであるアパレル企業の事例を使って解説します(データについては実際の状況から大きく外れない程度に加工しています)。
売上傾向分析とは、商品の売上推移を因数分解して分析することで課題を明確にする手法です。
図表4は全商品カテゴリの中からTシャツの売上状況を分解したグラフになります。
図表4
図表1のように売上を因数分解してそれぞれの傾向を見ていくことは、データ分析における一つの重要な方法になります。商品の売上は、
売上 = 販売数量 × 商品単価
に因数分解できます。更に、
販売数量 = 取り扱い品番数 × 品番当り販売数量
に因数分解できます。
「商品単価」については、企業側でコントロールできる部分になります。より低単価の商品を取り揃えたり、値引きなどを従来よりも積極的に行うと、商品単価は下がっていく傾向になることが通常です。
また、「販売数量」のうち「取り扱い品番数」も企業側でコントロールできる部分になります。取り扱い品番数とは、1年間(あるいは一定期間)において製造した(あるいは仕入れた)商品の種類になります。品番数とは、通常同じ型、デザインの商品を「1品番数」とします。(カラーやサイズの違いにおいても売れ方が大きく異なる場合はそこまで分解することもあります)企業側が製造する種類(あるいは仕入れる種類)を増やせば、必然的に「取り扱い品番数」は増えることになります。
このように、商品の売上は
売上
= 販売数量×商品単価
= (取り扱い品番数×品番当り販売数量)×商品単価
に分解して売上の増減している要因を把握していくことができます。
このとき気を付けるのが、商品のカテゴリによって傾向が異なることが多いので、全ての商品を一緒にして因数分解するのではなく、カテゴリごとに分けてそれぞれで因数分解していくことが重要です。
さて、図表4を改めて見てみましょう。
図表4 (再掲)
折れ線グラフが、前年対比を示していますが、一番左の売上は13期、14期と前年対比100%を下回っていることが分かります。
しかし因数分解していくと、「販売数量」は年々減少傾向、「商品単価」はほぼ横ばいということが分かります。
更に、販売数量を因数分解すると、「取り扱い品番数」は大きく増加していますが、「品番当り販売数量」は大きく減少していることが分かります。
このアパレル企業では、売上減少に転じてしまったことにより、売上増加に向けた施策として、取り扱い品番数を増やすこと(要はたくさんの種類の商品を取り揃えること)を実施していったのですが、結果としては、お客様が分散してしまい、品番当りの販売数量が大きく減少してしまった問題を引き起こしてしまいました。
実はこのようなケースはよく見ます。売上を上げるための施策として品揃えを豊富にする、ということはよくありますが、店舗などでは物理的な制限もあるため、適正な品揃えというものがあります。
本来であればもっと売れた商品が、品揃えを増やし過ぎた結果、十分な在庫を置くことが出来ず売り逃しを引き起こしてしまった、ということが起こっている可能性があるでしょう。
また、商品の品揃えを増やせば増やすほど、在庫も増えることが多いです。在庫が増えてもそれが売れれば問題ないですが、売れ残ってしまうとまた別の問題を引き起こしてしまいます。
図表4のように、商品の売上を因数分解することで、今売上増加している、あるいは減少している要因がどこにあるのか明確になります。
同じ企業でも商品カテゴリごとにその傾向は異なっている可能性もあるので、各カテゴリごとに行うことが重要です。
更にそのTシャツを単品ごとに見ていくことでより原因を深掘りすることができます。いきなり単品ごとに分析するのではなく、まずはカテゴリ全体で傾向を見て、その後にカテゴリ内の各商品ごとに分析するという順序を間違えないように気を付けてください。
ランキング分析
ランキング分析では、各商品カテゴリの全商品の売上増減傾向を分析することで、企画や販売における課題を導き出します。
図表5は、先ほどのグラフにおける10期と14期のTシャツの売上の高い商品から順番に並べたグラフとなります。
図表5 T シャツの売上高(10期と14期の比較)
まず、下の方の101位以下で10期から14期にかけて増加していますが、これはその前の図表1で把握できた取り扱い品番数が増加したことによるものです。商品数が増えたので必然的に下位の売上が増加しています。
一方で、100位までの上位〜中位の品番においては総じて売上減少していることが分かります。人気商品の力が弱まっていることが分かります。
このように、売上を商品ごとにまで分解することで、なぜ減少しているのか(あるいは増加しているのか)の要因を把握することができます。
販売傾向分析
販売傾向分析では、週次や日次での各商品の売れ方を分析することで、売り逃しや死筋商品の傾向を把握し、最適なディストリビューション(値下げ、追加発注、店間移動)へと繋げます。
アパレル商品を扱うような小売企業でよく起こるのが図表6のような傾向です。
図表6 T シャツの売上上位商品における売上推移
これは、先ほどの14期における1位~10位の商品の週ごとの累積売上を図示したものになります。
ハイライトした部分に注目していただければと思います。今まで週が経過するごとに売上が上がっていたのが、途中から横ばいになっています。これはこの時点で売れなくなってしまった、ということを表しています。
しかし、急に売れなくなることが起こりえるかというと、なかなか想像しにくいのではないでしょうか。これは、在庫が切れてしまい、店頭に商品がなくなってしまったことにより売れなくなってしまっているのです。
もし在庫があればきっとまだ売れていたに違いない、ということがグラフからも想像できると思います。これが小売業ではよく起こる「売り逃し」という状況です。
もし現状分析をして、このような状態が起こっていることが把握できれば、売上を上げることは比較的簡単です。在庫状況と販売状況を常にウォッチすることで、適切なタイミングで追加発注して売り逃しを防ぐことができ、売れるものを確実に売ることができます。
同じように、売れないものの判断もすることができます。その場合は素早く値下げして少しでも多く現金化するような施策へと繋げます。
このように、小売業では、販売データとときには在庫データも組み合わせることで、細かい打ち手へと繋げることができます。
売筋・死筋分析
売筋・死筋分析では、販売データだけでなく、各商品の仕入データや在庫データと組み合わせることで、商品の売筋・死筋を把握することができます。
図表7は、各商品カテゴリにおける売上、仕入、在庫それぞれの10期と14期の推移を比較したものになります。
図表7 主な商品カテゴリにおける売上/仕入/在庫の原価推移
商品カテゴリによって傾向が全く異なることが分かります。企業の戦略が戦略通りに数字に反映されているかも確認できます。
例えば、図表7では、カテゴリA,C,Dでは在庫を大きく減らしています。戦略として在庫圧縮していることが数字からも読み取れます。それに伴い売上も減少しています。
一方で、カテゴリB,Gは在庫を増加させています。しかし、カテゴリBは売上は減少しているため、在庫増加に伴う売上増加ができていないことが分かります。カテゴリGについても増やした在庫ほどの売上増加にはなっていないため、在庫過多になってしまっている商品(死筋商品)が発生してしまっている可能性があることが分かるでしょう。
あとは、先ほどのTシャツの例で行ったように、各カテゴリにおいて単品ごとに売上、仕入、在庫を分析することで、より詳細に商品における課題が抽出できるのです。
当ブログではこの他にも様々な視点からのデータ分析が学べる記事を公開しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
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