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機会損失を防ぐ商品分析のやり方【アパレルメーカーのデータ分析事例】

機会損失を防ぐ商品分析のやり方

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機会損失や過剰在庫は商品分析で対策できる

商品の製造・販売(卸)をしているほとんどの企業が陥っている状況として、売筋商品が在庫切れとなってしまい機会損失(売り逃し)を発生させていることがあります。その一方で死に筋商品をいつまでも抱えていてキャッシュ化できない在庫を多く持ってしまっていることも多々あります。

この部分を整理、分析し、単品ごとに可視化することで今後の適切なMD計画や、追加発注等の施策を適切に行うことができるようになります。

商品分析のやり方

弊社のクライアントであるアパレルメーカーA社の事例をもとに、商品分析のやり方を解説します。

売上を因数分解して課題を洗い出す

図表1は全商品カテゴリの中からTシャツの売上状況を分解したグラフです。

図表1 Tシャツの売上分解

図表1のように売上を因数分解してそれぞれの傾向を見ていくことは、データ分析における一つの重要な方法になります。

商品の売上は、

売上 = 販売数量 × 商品単価

に因数分解できます。更に、

販売数量 = 取り扱い品番数 × 品番当り販売数量

に因数分解できます。「商品単価」については、企業側でコントロールできる部分になります。より低単価の商品を取り揃えたり、卸掛率を引き下げるなどを従来よりも積極的に行うと、商品単価は下がっていく傾向になることが通常です。

また、「販売数量」のうち「取り扱い品番数」も企業側でコントロールできる部分になります。取り扱い品番数とは、1年間(あるいは一定期間)において製造した商品の種類になります。品番数とは、通常同じ型、デザインの商品を「1品番数」とします。(カラーやサイズの違いにおいても売れ方が大きく異なる場合はそこまで分解することもあります)企業側が製造する種類を増やせば、必然的に「取り扱い品番数」は増えることになります。

このように、商品の売上は

売上 = 販売数量 × 商品単価
   =(取り扱い品番数 × 品番当り販売数量)× 商品単価

に分解して売上の増減している要因を把握していくことができます。

このとき気を付けるのが、商品のカテゴリによって傾向が異なることが多いので、全ての商品を一緒にして因数分解するのではなく、カテゴリごとに分けてそれぞれで因数分解していくことが重要です。

前年対比をチェックして、売上減少の原因を突き止める

さて、図表1を改めて見てみましょう。

図表1(再掲) Tシャツの売上分解

折れ線グラフが、前年対比を示していますが、一番左の売上は13期、14期と前年対比100%を下回っていることが分かります。

しかし因数分解していくと、「販売数量」は年々減少傾向、「商品単価」はほぼ横ばいということが分かります。更に、販売数量を因数分解すると、「取り扱い品番数」は大きく増加していますが、「品番当り販売数量」は大きく減少していることが分かります。

このアパレルメーカーでは、売上減少に転じてしまったことにより、売上増加に向けた施策として、取り扱い品番数を増やすをこと(要はたくさんの種類の商品を取り揃えること)を実施していったのですが、結果としては、商品力が分散してしまい、品番当りの販売数量が大きく減少してしまった問題を引き起こしてしまいました。

品揃えと在庫数の関係性

実はこのようなケースは良く見ます。売上を上げるための施策として品揃えを豊富にする、ということはよくありますが、やみくもに増やしてもそれが売上と連動するわけではありません。

また、品揃えを増やした分、全体の在庫調整により売れる商品の在庫も圧縮し過ぎてしまい、本来であればもっと売れた商品が、売れなくなってしまった、ということが起こっている可能性があるでしょう。

あるいは、商品の品揃えを増やせば増やすほど、在庫も増えることが多いです。在庫が増えてもそれが売れれば問題ないですが、売れ残ってしまうとまた別の問題を引き起こしてしまいます。

図表1のように、商品の売上を因数分解することで、今売上増加している、あるいは減少している要因がどこにあるのか明確になります。商品カテゴリごとにその傾向は同じ企業でも異なっている可能性もあるので、各カテゴリごとに行ってみることが重要です。

単品ごとの分析で原因を深掘りする

更にそのTシャツを単品ごとに見ていくことでより原因を深掘りすることができます。

いきなり単品ごとに分析するのではなく、まずはカテゴリ全体で傾向を見て、その後にカテゴリ内の各商品ごとに分析するという順序を間違えないように気を付けてください。

図表2は、先ほどのグラフにおける10期と14期のTシャツの売上の高い商品から順番に並べたグラフとなります。

図表2 Tシャツの売上ランキング別の売上推移

まず、下の方の101位以下で大きく10期と14期に差が見られますが、これは取扱い品番数が増加したことによるものです。品番数が増えたので必然的に下位の売上が増加しています。

品揃えを増やしたことで売り逃がしが発生した?

注目すべきは上位の商品になります。売上規模の大きい上位の商品で減少していることが分かります。単純に人気商品の力が弱まっているのかもしれませんが、先ほどお伝えしたように品揃えを増やしたことにより売筋商品も含めて在庫を圧縮してしまったことで上位商品に売り逃しが発生してしまったことも仮説として挙げられるでしょう。

売上推移から機会損失を見つける

その仮説を検証するための方法が図表3です。

図表3 Tシャツの上位品番における週次売上推移

これは、図表2で示した14期における1位〜10位の商品の週ごとの累積売上を図示したものになります。

背景色のある部分に注目していただければと思います。今まで週が経過するごとに売上が上がっていたのが、途中から横ばいになっています。これはこの時点で販売できなくなった、ということを表しています。販売できなくなった、と言うことは在庫がなくなった、と言うことです。しかし、グラフを見る限り、もし在庫があれば引き続き売れたであろうことが想定されます。

もちろん戦略上数量限定商品もあるかもしれませんし、卸先との取り決めなどもあるかもしれません。しかし、想定されるのは、品揃えを増やしてことにより在庫が増え、全体の在庫を圧縮するために売れる商品の在庫も一律に削減した結果、需要があるにも関わらず販売できなくなってしまった状況を引き起こしてしまったことでしょう。

売上減少のメカニズム

事実、このアパレルメーカーA社は、図表4のような状況を引き起こしてしまっていました。

図表4 売上減少メカニズム

本来あるべきなのは、在庫状況と販売状況を常にウォッチすることで、適切なタイミングで追加発注することで売り逃しを防ぐことです。

また、同じように、売れないものの判断もすることができます。その場合は素早く値下げして少しでも多く現金化し、在庫を削減するような施策へと繋げます。

生産データ、在庫データとの組み合わせでより細かい分析を行う

販売データだけでなく、各商品の生産データや在庫データと組み合わせることで、更なる分析が可能となります。

図表5は、各商品カテゴリにおける売上、生産、在庫それぞれの2013年と2018年の推移を比較したものになります。

図表5 商品カテゴリ別の売上/生産/在庫における原価推移

商品カテゴリによって傾向が全く異なることが分かります。企業の戦略が戦略通りに数字に反映されているかも確認できます。

例えば、図表5では、カテゴリA,C,Dでは在庫を大きく減らしています。戦略として在庫圧縮していることが数字からも読み取れます。それに伴い売上も減少しています。

一方で、カテゴリB,Gは在庫を増加させています。しかし、カテゴリBは売上は減少しているため、在庫増加に伴う売上増加ができていないことが分かります。カテゴリGについても増やした在庫ほどの売上増加にはなっていないため、在庫過多になってしまっている商品(死筋商品)が発生してしまっている可能性があることが分かるでしょう。

あとは、先ほどのTシャツの例で行ったように、各カテゴリにおいて単品ごとに売上、生産、在庫を分析することで、より詳細に商品における課題が抽出できるのです。

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