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ECサイトの平均的なリピート率は30%?計算方法や改善施策も解説

ECサイトのリピート率とは

リピート率とは、累計の顧客数に対するある期間のリピート顧客数の割合のことです。自社ECサイトの顧客におけるリピート顧客の割合を知るために使われる指標です。

リピート率の計算方法

たとえば今年の2月のリピート率を知りたい場合には

今年の2月のリピート顧客数÷累計新規顧客数×100

で求めることができます。

リピーター率との違い

リピート率に似た指標にリピーター率というものがあります。これはある期間の顧客数に対するリピート顧客数の割合のことです。

たとえば今年の2月のリピート率を知りたい場合には

今年の2月のリピート顧客数÷今年の2月に商品を購入した顧客数×100

で求めることができます。リピート率の場合には分母が累計新規顧客数であったのに対して、リピーター率の分母は分子と同じ期間の顧客数になっています。

リピート率の定義は企業ごとに異なっている場合も多い

リピート率とリピーター率の定義についてご紹介しましたが、実際にはそこまで厳密な定義はなく、リピーター率をリピート率と呼んでいる場合もありますし、顧客数ではなく購入件数で計算されている場合もあります。また、呼び方もリピート率ではなく継続率と呼ぶ場合もあります。

このような場合に、定義や呼び方をこの記事で紹介しているものに揃えることはあまり重要ではありません。自社サイトの運営状況を把握するために重要なのは、リピート率をどのように定義しているかを把握しておき、その定義で統一して指標の推移を見ていくことです。

リピート率の重要性

サイトを運営するときには集客に意識がいきがちですが、新しいユーザーを呼び込むだけではいつまでも集客にコストをかけ続けなくてはいけませんし、安定した売上を確保するのは難しいです。

マーケティングにおける有名な法則に1:5の法則というものがあります。これは商品を販売する際にかかるコストがリピーターと新規顧客ではおおむね1:5になっているという法則です。実際は商材やブランドの認知度によって変わってきますが、リピーターへのマーケティングコストは低く抑えることができるのはどのような業界でも共通です。

同じくリピートに関する法則にパレートの法則というものがあります。これは、2割の優良顧客が売上の8割を構成する、という法則です。ECサイトの運営においても、売上の大部分を構成するようなリピート顧客をしっかりと捕まえることが重要です。

ECサイトの平均的なリピート率

ECサイトの平均的なリピート率は30〜40%と言われています。実際、弊社クライアントの場合も30〜40%の企業は多いです。

業界別のリピート率

取り扱っている商品の種類や価格帯によってリピート率は変わります。主な業界別の平均値について確認してみましょう。

アパレルは35%

アパレルECサイトの平均的なリピート率は35%程度と言われています(参考:リピート率とは?算出方法やECサイトでの改善方法を解説)。アパレルの商品は気に入ったブランドがあればリピーターとなることもありますが、決まった一つのブランドだけを買うという人も多くはないため、リピート率も平均的な数値になっていることが考えられます。

食品、生活用品は50%

食品、生活用品の平均的なリピート率は50%程度と言われています(参考:リピート率とは?算出方法やECサイトでの改善方法を解説)。EC業界における食品というと健康食品など、単品の通販も多く、リピート購入を中心に販売しているサイトも多いため、リピート率も高めになっていると考えられます。

化粧品は50%

化粧品の平均的なリピート率は50%程度と言われています(参考:ECの業種別平均リピート率とリピート率向上の成功事例)。化粧品も健康食品と同じく、使っている商品がなくなったら同じものを定期的に購入する場合が多いため、リピート率も高めになりやすいです。

平均値はあくまで目安

業界別の平均値をご紹介しましたが、業界だけに限らずECサイトの規模や継続年数など、商品以外の様々な要因によってリピート率は変わってくるため、平均値はあくまで目安として把握しておきましょう。

実際に自社のリピート率をチェックする際には、前月や前年の同月と比較するなど、自社の数値の推移に着目して改善施策を行なっていきましょう。

リピート率の改善施策

リピート率が下がってしまっている場合や、平均値と比べて著しく低い場合の改善策について解説します。

優良顧客の購買傾向を分析する

リピート率を改善したい場合に効果的なのが、すでにリピーターとなっているユーザーの購買傾向を分析することです。

すでにリピーターとなっているユーザーがどのようなステップを踏んで繰り返し商品を購入するようになったのかを把握し、新規のユーザーが似た行動をするように誘導することで効果的にリピートを促すことができます。

分析の具体的なやり方は後述の改善事例で解説します。

既存顧客向けのクーポンを発行する

ECサイトを利用したことがあるユーザーにはメールやLINEなどでクーポンを発行することができます。

「メール会員限定」で割引などの特典が得られるクーポンなどでリピートを促進しましょう。

メールマガジン等で定期的にアプローチする

クーポンでなくても、ユーザーにとって役に立ちそうな情報をメールで発信し、サイトに再訪してもらうのも効果的です。購入目的でなくてもサイトにアクセスしたのをきっかけに気になる商品が見つかり購入してもらえることもよくあります。

特にメールでのアプローチはWeb広告などのようにあらたなコストがかからず費用対効果も高いため積極的に活用するのがおすすめです。

既存顧客向けの情報をブログで発信する

サイト内でブログなどを更新し、ユーザーに役立つ情報を発信していくのも効果的です。

更新したブログをメールマガジンでお知らせするなど、ブログとメールを組み合わせてサイトへの再訪を促していきましょう。

カタログやクーポンなどを商品に同梱する

メールやブログなどWeb上での施策に限らず、商品が届いた時に一緒にカタログやクーポンを同梱するのも効果的です。

カタログやクーポンを紙で準備するのはコストがかかりますが、商品が届いた時の箱は必ず開封され、同梱物もほぼ確実にユーザーの目に入ります。メールやLINEよりも確実にユーザーに情報を届けられるためぜひ取り組んでみましょう。

リピート率改善事例

ここからは「雑貨小売企業A社」のECサイトの事例をもとに、データ分析に基づいてリピート率を改善するための手順を解説します。

この事例では、商品名などは伏せているほか、実態から大きく外れない範囲で数値データを加工していますが、実際に近いケースを扱うことで、この記事をお読みのみなさんが現実感を持ちやすく、現場のニーズを当てはめやすいものとなるよう構成しています。

Case Study
雑貨小売企業A社のECサイトのデータを分析して、売上を高めるための効果的な施策を検討していきましょう。 A社ECサイトの売上規模は年間約1.5億円、会員数は約26000人(調査時点。売上の3分の2程度を会員が占める)、1人あたりの1回当り平均購入金額は約1万円。

今回はリピート率の改善事例ですが、いきなりリピート率の改善施策を検討するのではなく、まずは全体の数値からどこに課題があるのかを明確にしていきましょう。

“売上”は”購入件数”と”購入単価”の掛け算で構成されています。さらに”購入件数”と”購入単価”を構成する要素に分解していくと、下のような指標に分けることができます。

これらの指標の推移を確認することで、サイトの売上が下がっている原因をより明確にすることできます。

下の図は各指標について、A社のECサイトの当月の数値を整理したものです。

この図を見ると、売上が前月比、前年同月比ともにマイナスになっており、A社のECサイトの売上が減少傾向であることが分かります。

さらに細かく指標を確認していくと、”1回辺り購入点数”と”既存客による購入件数”が前月比マイナスとなっており、売上減少の要因となっていることが分かります。

このように、売上を因数分解して各指標の推移を確認することで、課題を明確にすることができます。

CPM分析でリピーターを育成する

ここからは”既存客による購入件数”を改善する、つまりリピート率を改善する方法を解説していきます。ちなみに”1回辺り購入点数”の改善方法については「併売を促して購入単価を高める!雑貨ECサイトのデータ分析事例」で解説しているので興味のある方はチェックしてみてください。

まずはサイトの既存客の利用状況を分析していきましょう。

既存客の利用状況の分析は、CPM分析という手法を使って行います。CPM分析とは、購入回数、サイト利用期間、購入金額に応じて顧客を10のグループに分類し、購買傾向などを分析する手法です。CPM分析の詳しい手順は「CPM分析とは?顧客分析でECサイトのリピート率を高める!」で解説しています。

まず以下のような購入回数、サイト利用期間、購入金額に応じて、顧客を5つのグループに分類します。

  • 初回客(1回しか購入していない顧客)
    → 購入回数が1回
  • よちよち客(リピーターでサイトの利用期間は短い顧客)
    → 購入回数が2回以上、初回購入から最終購入日までの差が90日未満
  • コツコツ客(リピーターでサイトの利用期間も長いが、購入金額が小さい顧客)
    → 購入回数が2回以上、初回購入から最終購入日までの差が90日以上、購入金額が7千円未満(基準となる購入金額は、平均購入金額の70%に設定するのが一般的です)
  • 流行客(リピーターでサイトの利用期間も長く、購入金額も大きい顧客)
    → 購入回数が2回以上、初回購入から最終購入日までの差が90日以上210日未満、購入金額が7千円以上
  • 優良客(リピーターでサイトの利用期間が流行客よりもさらに長く、購入金額も大きい顧客)
    → 購入回数が2回以上、初回購入から最終購入日までの差が210日以上、購入金額が7千円以上

さらに、以下の条件を加えて、10のグループに分類します。

  • 現役(現在もサイトを利用している顧客)
    → 最終購入日から今日までの期間が240日未満
  • 離脱(現在はサイトを利用していない顧客)
    → 最終購入日から今日までの期間が240日以上

上記の分類によって、A社ECサイトの顧客を集計したところ以下のようになりました。

A社のECサイトでは、初回客が83%を占めており、リピーターの割合は全体の17%しかいません。一般的にECサイトのリピート率は30%程度と言われているため、このサイトはリピーターが少ないことが分かります。

“既存客による購入件数”を上げていくためには、初回客をよちよち客に、よちよち客をコツコツ客に育成していくところから行っていく必要があります。そこで今回は、初回客をよちよち客に育成する施策を立案する手順を解説していきます。

初回客をよちよち客に育成する

以下のグラフは、A社の主力商品である「カレー皿 / パスタ皿」を購入したよちよち客が、次の購入時に買った商品について集計したものです。(「カレー皿 / パスタ皿」を購入する前は初回客)

「カレー皿 / パスタ皿」を購入したよちよち客の多くが、「カレー皿 / パスタ皿」「丼 / ラーメン」「焼き物皿 / サンマ皿」を購入しています。

そこで、「カレー皿 / パスタ皿」を購入した初回客には、”メルマガで「カレー皿 / パスタ皿」「丼 / ラーメン」「焼き物皿 / サンマ皿」の割引クーポンを配る”あるいは、”「カレー皿 / パスタ皿」を購入した現役初回客には「丼 / ラーメン」「焼き物皿 / サンマ皿」の割引クーポン付きのカタログを自宅に送付する”などの施策が効果的だと考えられます。

さらに下のグラフは、コツコツ客が「カレー皿 / パスタ皿」を購入したあと、次に「カレー皿 / パスタ皿」「丼 / ラーメン」「焼き物皿 / サンマ皿」などを購入するまでの期間を集計したグラフです。

このグラフを見ると、「2週間以上1ヶ月以内に購入する人」が多く、次いで「2ヶ月以上2ヶ月以内に購入する人」が多いことが分かります。

これらの分析結果から、よちよち客へのクーポン配布やサンプルの送付を行う時期は2週間後と1ヶ月後あたりに行うのが効果的だと考えられます。

データ分析で導き出した施策
  • 施策1:「カレー皿 / パスタ皿」を購入した初回客へ、購入後2週間後にメールで「カレー皿 / パスタ皿」「丼 / ラーメン」「焼き物皿 / サンマ皿」の割引クーポンを配信する
  • 施策2:「カレー皿 / パスタ皿」を購入した初回客へ、半年後に「カレー皿 / パスタ皿」「丼 / ラーメン」「焼き物皿 / サンマ皿」の割引クーポン付きのカタログを自宅に送付する

データに基づく顧客育成で売上を高める

CPM分析を活用することで、顧客のグループごとの傾向を掴むことができるため、効果的な顧客育成を実現することができます。

この記事で行ったようなCPM分析はエクセルなどで集計して行うこともできますが、データ量が多い場合は専用のツーツを使って行うのがおすすめです。弊社では、CPM分析をはじめとしたECサイトに必要なデータ分析を簡単に実践できる「EC-Dashboard」を提供しています。
(今回記事内でご紹介した表やグラフも、EC-Dashboardを使って作成しています。)

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