ナーチャリング(顧客育成)とは?正しい意味や施策の例を解説
この記事では現代のマーケティング活動において欠かせない考え方であるナーチャリングの意味や取り組み方について解説します。
目次
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ナーチャリング(顧客育成)とは?
ナーチャリング(顧客育成)とは、メルマガやDMなどを活用して、まだ自社の商品を購入したことがない見込み顧客に購入を促したり、一度商品を購入したことがある顧客にリピートを促したりすることです。顧客とより密接な関係を築く取り組みを育成にたとえて、ナーチャリング、あるいはリードナーチャリングなどと呼ばれます。
リードジェネレーションとは?
リードナーチャリングと似た言葉としてリードジェネレーションというものがあります。
ナーチャリングを行うためには、顧客のメールアドレスや名前などの情報が必要です。そこでナーチャリングを行う準備段階として、サービス資料やカタログをダウンロードしてもらう際にメールアドレスや名前などの情報をフォームに入力してもらうことがあります。
このように、ナーチャリングに必要な顧客の情報を獲得する取り組みのことを、「見込み顧客を生み出す」という意味で「リードジェネレーション」と呼びます。
ナーチャリングの2つのパターン
ナーチャリングには大きく分けて2つのパターンがあります。それは
- 見込み顧客のナーチャリング
- 既存顧客のナーチャリング
です。
見込み顧客のナーチャリング
見込み顧客のナーチャリングとは、見込み顧客、つまりまだ自社の商品を購入したことがない顧客へアプローチして購入を促すことです。
これは家や車のような高価な商品、あるいは企業向けの商品を提供しているBtoB事業で効果的なナーチャリングです。高価な商品や企業向けの商品は、商品の購入を検討し始めてから実際に購入するまでにそれなりの期間がかかる場合が多いです。その検討期間に様々な手法で顧客にアプローチし購入を促すのが見込み顧客へのナーチャリングです。
検討期間にアプローチするために、事前にアンケートや詳細資料のダウンロードを促してメールアドレスなどの情報を取得しておくのが効果的です。
逆に、一般消費者向けの安価な商品では、購入までの検討期間が短い場合が多いためあまり効果的ではありません。
既存顧客のナーチャリング
ナーチャリングのもう1つのパターンが既存顧客のナーチャリングです。これはすでに商品を購入したことがある顧客へのアプローチによってリピートを促す手法です。これは高価な商品、企業向けの商品はもちろん、安価な商品でも効果的です。
そのため、「ナーチャリング」とは呼ばれていない場合でも、リピート施策として多くの企業で取り組まれています。
ナーチャリングが重要視されいてる背景
マーケティングにおけるナーチャリングという手法は近年特に重要視されるようになっています。その主な理由は
- ユーザーが比較検討しやすくなったから
- 個別でのアプローチが容易になったから
です。
ユーザーが比較検討しやすくなった
インターネットの普及によって、企業ごとにホームページをもち、詳しい情報を提供できるようになりました。さらにSNSなどによってユーザーによる口コミなどの情報も簡単に手に入るようになっています。そのため、ユーザーは商品の購入前に様々な情報を入手できるようになり、その結果商品の購入までの検討期間のユーザーへのアプローチがとても重要になってきています。
個別でのアプローチが容易になった
また、メールやSNS、スマホアプリなどの様々なツールによって企業がユーザーに対して個別のアプローチを行いやすくなっているのもナーチャリングが重要視されている要因になっています。
マーケティングオートメーションなどのツールを使えば、顧客一人ひとりのWeb上の動きを把握したり、それにあった適切なアプローチを自動で行うことも可能になります。
顧客一人ひとりに対して適切なアプローチが行えるようになったことで、ナーチャリングの重要性はより高まっています。
ナーチャリングのメリット
ナーチャリングに取り組むことによって
- 営業効率が上がる
- 安定的な売上の確保できる
といったメリットを得ることができます。
既存顧客へのアプローチは新規顧客の獲得に比べて少ないコストで取り組むことができます。一度自社の商品を購入したことがある顧客は新規顧客に比べて購入に対するハードルも低いため、ナーチャリングは営業活動の効率化につながります。
また、顧客との信頼関係を構築し特別なアプローチを行わなくても商品をリピートしてもらるくらいまでナーチャリングできたり、商品によっては定期購入などを契約してもらうことができれば安定した売上の確保にもつながります。
ナーチャリングに活用できる7つの施策
ナーチャリングの基本は顧客との接触回数を増やすことです。顧客にとって役に立つ情報を定期的に発信するなどして、信頼関係を構築することで顧客を育成していくことができます。
そのために活用できる主な施策には以下のようなものがあります。
- SNSの運用
- オウンドメディアの運営
- メルマガ/ステップメールの配信
- Web広告の配信
- 紙のカタログやチラシの送付
- MAの導入
- セミナーの開催
- インサイドセールスによるアプローチ
1〜6は高価な商品や企業向けの商品、安価な商品のいずれにも効果的な手法です。6のMAの導入は直接的なアプローチ手法ではありませんが、顧客の行動を分析したり、アプローチを自動化して効率的なナーチャリングを行うのに役立ちます。7と8は高価な商品や、特に企業向けの商品を扱っている場合のナーチャリングに有効です。
ナーチャリングの取り組み方
効果的にナーチャリングを行うためには、上記に挙げたような施策をしつこいと思われない適切な頻度とタイミングで実施することが重要です。そのためには顧客データの分析に基づいて施策に取り組むのが効果的です。
そこで、ナーチャリングのためのデータ分析と施策立案の取り組み方を、弊社クライアントの事例を元に解説します。
この事例では、商品名などは伏せているほか、実態から大きく外れない範囲で数値データを加工していますが、実際に近いケースを扱うことで、この記事をお読みのみなさんが現実感を持ちやすく、現場のニーズを当てはめやすいものとなるよう構成しています。
Case Study
化粧品会社A社のECサイトの客単価を高めるための効果的な施策を検討していきましょう。
A社ECサイトの売上規模は年間約1億円、会員数は約8000人(調査時点。売上の3分の2程度を会員が占める)、1人あたりの1回当り平均購入金額は約1万円。
CPM分析による顧客分析
CPM分析という手法を使って顧客分析を行います。CPM分析とは、購入回数、サイト利用期間、購入金額に応じて顧客を10のグループに分類し、購買傾向などを分析する手法です。
CPM分析の詳しい手順は「CPM分析とは?顧客分析でECサイトのリピート率を高める!」で解説しています。
まず以下のような購入回数、サイト利用期間、購入金額に応じて、顧客を5つのグループに分類します。
- 初回客(1回しか購入していない顧客)
→ 購入回数が1回 - よちよち客(リピーターでサイトの利用期間は短い顧客)
→ 購入回数が2回以上、初回購入から最終購入日までの差が90日未満 - コツコツ客(リピーターでサイトの利用期間も長いが、購入金額が小さい顧客)
→ 購入回数が2回以上、初回購入から最終購入日までの差が90日以上、購入金額が7千円未満(基準となる購入金額は、平均購入金額の70%に設定するのが一般的です) - 流行客(リピーターでサイトの利用期間も長く、購入金額も大きい顧客)
→ 購入回数が2回以上、初回購入から最終購入日までの差が90日以上210日未満、購入金額が7千円以上 - 優良客(リピーターでサイトの利用期間が流行客よりもさらに長く、購入金額も大きい顧客)
→ 購入回数が2回以上、初回購入から最終購入日までの差が210日以上、購入金額が7千円以上
さらに、以下の条件を加えて、10のグループに分類します。
- 現役(現在もサイトを利用している顧客)
→ 最終購入日から今日までの期間が240日未満 - 離脱(現在はサイトを利用していない顧客)
→ 最終購入日から今日までの期間が240日以上
上記の分類によって、A社ECサイトの顧客を集計したところ以下のようになりました。
A社のECサイトでは、初回客が83%を占めており、リピーターの割合は全体の17%しかいません。一般的にECサイトのリピート率は30%程度と言われているため、このサイトはリピーターが少ないことが分かります。
客単価を上げていくためには、初回客をよちよち客に、よちよち客をコツコツ客に育成していくところから行っていく必要があります。
初回客をよちよち客に育成する場合の例は「CPM分析とは?顧客分析でECサイトのリピート率を高める!」で解説しているので、今回は、よちよち客をコツコツ客に育成する施策を立案する手順を解説していきます。
よちよち客をコツコツ客に育成する
以下のグラフは、A社の主力商品である商品カテゴリGを購入したコツコツ客が、次の購入時に買った商品について集計したものです。(商品カテゴリGを購入した時点ではよちよち客だった顧客も含む)
「商品カテゴリG」を購入したコツコツ客の多くが、「商品カテゴリG」「商品カテゴリQ」「商品カテゴリB」を購入しています。
そこで、「商品カテゴリG」を購入した初回客には、”メルマガで「商品カテゴリG」「商品カテゴリQ」「商品カテゴリB」の割引クーポンを配る”あるいは、”「商品カテゴリG」を購入した現役初回客には「商品カテゴリQ」「商品カテゴリB」の無料サンプルを自宅に送付する”などの施策が効果的だと考えられます。
さらに下のグラフは、コツコツ客が「商品カテゴリG」を購入したあと、次に「商品カテゴリG」「商品カテゴリQ」「商品カテゴリB」を購入するまでの期間を集計したグラフです。
このグラフを見ると、「3ヶ月以上半年以内に購入する人」が多く、次いで「半年以上1年以内に購入する人」が多いことが分かります。
これらの分析結果から、よちよち客へのクーポン配布やサンプルの送付を行う時期は3ヶ月後と半年後あたりに行うのが効果的だと考えられます。
- 課題:初回客の割合が高く、リピーターが少ない
- 施策1:「商品カテゴリG」を購入したよちよち客へ、購入後3ヶ月後にメールで「商品カテゴリQ」「商品カテゴリB」の割引クーポンを配信する
- 施策2:「商品カテゴリG」を購入したよちよち客へ、半年後に「商品カテゴリG」「商品カテゴリQ」「商品カテゴリB」の無料サンプルを送付する
同じくナーチャリングに使われる分析手法にRFM分析と呼ばれるものあります。この手法については「RFM分析とは?具体的なやり方を事例をもとに解説」で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
ナーチャリングの成功事例
株式会社NewsTV :ナーチャリング経由の売上が170%に
企業や官公庁を対象とした動画の制作や、広告配信サービスを運営している株式会社NewsTVでは、ナーチャリングを効率的に行ううえで優先度の高い架電とメルマガ配信を効率的に行うためにマーケティングオートメーションを導入しました。
それによって見込み顧客の状況を視覚化でき、さらにそれまで手動で時間をかけて行なっていたメールアプローチも素早く取り組める環境を作りました。その結果ナーチャリングを強化する前に比べて月間でのナーチャリング経由の売上を170%にまで伸ばすことに成功しています。
参考:
ナーチャリング経由売上170%に インサイドセールス×MA「SATORI」で成果を上げるNewsTV
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