社内データ管理のコツとは?分析、活用方法も解説
企業でデータ分析を行う上で、最も使うことの多いデータは、社内に蓄積されている数値データです。ここでは理想的な社内データ管理と活用方法について、事例を交えながら解説していきます。
目次
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社内データ管理の重要性
データ分析を実施するにあたって、もととなる「数値データ」を正しく集めることは、その先の分析において重要な役割を担います。
数値データが精度の高いものであればあるほど、データ分析の精度も上がり、結果として目的達成により速く的確に結びつくからです。
準備すべき数値データに抜け漏れがある場合、数値データが足りない状態ですので、正しく解答を出せない可能性があります。その場合は、現状ある数値データの中で分析を行い、出てきた解答をもとにPDCAを回し、少しずつ改善していく必要があります。
逆に、数値データが多すぎて頭が混乱してしまうケースもあります。実際にはこちらのほうがデータ分析をしていく中でよく見かけます。このような混乱が起きる原因は、目的を明確にしないうちにデータ収集を始めてしまっていることです。データが多くても、慌てないで対応することが必要です。
社内データ管理のコツ
ここからは、社内データ管理のコツを解説します。
理想は数値データの一元管理
今日の企業では、日々の売上や商品情報(仕入先や原価など)などが社内のシステムに蓄積されていることが多く、みなさんも目にしたことがあると思います。
企業によって社内のデータの管理状況は異なっていると思いますが、理想は数値データが一元管理されており、必要なときにすぐに出てくるようなシステムがあることです。
ルール、フォーマットを統一する
ただ、基幹システムを入れているような一定規模以上の会社を除けば、まだ日々の売上データは営業部、商品の原価や仕入情報は商品仕入部、顧客のマスターデータはシステム部というように、各部署でそれぞれ管理している企業が多いようです。
もちろん、各部署がそれぞれで扱う数値データを保有していることが悪いと決めつけることはできません。ただ、各部署がそれぞれで数値データを保持していると、フォーマットがバラバラであるケースが多く、それぞれの数値データを突き合わせるときに大変な思いをすることになります。
フォーマットがバラバラなだけであればまだよく、同じ商品なのに年度によって商品IDや商品名が変わったり、部署ごとに異なる項目で管理したりしていることも頻繁にあります。その場合は各部署・各担当者にヒアリングをして項目・名称合わせから行うことになり、この作業に膨大な時間を費やすことになります。したがって、少なくとも社内で各数値(項目や名称)に対する共通ルールを設けておくことが必要です。そして、できれば同じフォーマットで記録するなどの工夫をしておくと、格段にデータの収集、管理が楽になります。
自社の目的に即した管理を行う
また、目的・課題仮説に即したデータを集めるために重要なポイントとして、
- 導き出した課題仮説を検証するためには
- どんな分析をする必要があり
- その分析をするためにはどんな数値データを収集しなければならないのか
を必ず整理することです。
そうすることで、常に目的を確認しながら、抜け漏れなく必要なデータを集めることが可能となります。
このように、データ分析をする前のデータ収集、管理は、データ分析の質を左右する大事なポイントになりますので、侮らないようにしてください。
社内データ活用、3つの手法
社内データの種類には様々なものがありますが、ここでは特に重要な売上データ、顧客データ、商品データの3つの活用方法を解説していきます。
売上データの分析・活用方法
何がどこでどのくらい売れているのかといった売上データが、商品やサービスを展開する上では最も基本的なデータです。
では、具体的なケースを見ていきましょう。
Case Study
来年度に向けた商品戦略立案を任された場合、戦略を構築していくにあたって、どのようなデータを抽出すればよいでしょうか?
まずは、それぞれの商品がどれだけ販売されたのかを分析するために、年度別の商品別売上データ〈図表1〉を引っ張ってくることが多いでしょう。
図表1 商品別売上データ(年度別)
あるいは、シーズンごとに売れる商品が異なるようなビジネスであれば、日別の売上を記録したデータ〈図表2〉を抽出するか、あるいは月ごとや週ごとのデータを集めます。
図表2 商品別売上元データ❶ (日別)
商品データの分析・活用方法(ABC分析)
さて、図表1の商品別売上データを、2018年度における売上降順に並べ替えて分析すると、商品別ABC分析の表やグラフ〈図表3・図表4〉ができます。
図表3 商品別ABC 分析(表)
図表4 商品別ABC 分析(グラフ)
「ABC分析」とは、重要度が高く、重点的に管理すべき対象を明らかにするために、A・B・Cという3つのランクに分ける方法で、それぞれのランクに応じて管理方法を選択します。
たとえば、販売管理を行う場合、商品や得意先などに応じてABC分析を行い、販売方法や販促頻度、あるいは売場構成比などを変えていくといった施策を打つ際に使います。
ただし、Aランクだけを重視するというわけではなく、各ランクそれぞれで管理方法を考えることが大切です。
一般的には、Aランクが累積売上構成比70%~80%まで、Bランクが累積売上構成比70%(あるいは80%)~90%まで、そしてCランクが累積売上構成比90%~100%です。
図表3・図表4の場合、2018年度の商品売上高でABC分析を行っていますが、上位5商品で売上全体の80%近くを占めていることがわかります。
顧客データの分析・活用方法
上記のようにABC分析を行うと、商品の優劣がはっきりするので、どれをテコ入れして販売していくのかはわかるようになりました。しかし、これで本当によいのでしょうか?
戦略とは「誰に、何を、どのように展開していくのか」です。
先ほどの分析では、商品ごとの優劣が明確になるため、「何を」展開していくのかはわかるものの、「誰に」がわからないため、具体的な打ち手まで落とし込むことができません。
結局「昨年と同様、○○商品を中心に販売していこう」で終わってしまい、売上改善にはつながりづらいでしょう。
そこで、商品×顧客別売上データ〈図表5〉を抽出します。日別の商品別売上元データ❶〈図表2〉と異なるのは、それぞれの商品を誰が購入したのかという「顧客情報」も含めているところです。
「誰が」購入しているのか、顧客の顔が見えれば、次の打ち手を構築することができます。
図表5 商品×顧客別売上データ
この図表5のようなデータを取得することによって、図表6のような分析が可能となります。具体的には、顧客情報が入ることによって、年代別で商品の購入状況が明確にわかるようになるのです。
図表6 商品別ABC 表(顧客年代別)
図表3のような商品別ABC分析までの段階では、単にどの商品を強化するかといった漠然とした打ち手しか考えられず、しかもそれが正しいのかどうかの判断も困難です。
しかし、この図表6のように顧客の顔まで見えるようになることによって、より細かな分析結果を出すことができ、それによって打ち手も明確になっていきます。
たとえば、売上が伸びてきている商品Dについては、構成比の高い30代女性に対してまずはアプローチをかけていくことがベターになります。
データ同士の紐づけ
よく問題になるのが、図表5のような商品×顧客別売上データがなかなか取れないということです。これは、商品別の売上データと顧客データベースが別々のファイルで保有されている場合が多いからです。
図表5のような理想的なデータは、いくつかのデータを紐づけることで完成させていきましょう。図表7は、商品別売上元データ❶(日別)〈図表5〉に顧客IDを組み合わせたものです。これと、顧客データベース〈図表8〉を紐づけします。
図表7 商品別売上元データ❷ (日別)
図表8 顧客データベース
図表7にある顧客IDに基づき、図表8から同じIDの顧客情報を、エクセルの「VLOOKUP」という関数を使い、紐づけていきます。
このように、手持ちのデータ同士を紐づけることで、分析に適した理想的なデータを完成させることができます。
こうした売上データと顧客データベースの紐づけを行うにあたっての条件として、顧客登録(会員カードやインターネット販売での会員登録)を行っていることが前提となってきます。
インターネット販売はもちろん、最近では店舗においても、比較的簡単に顧客情報を取れる仕組みをつくれます。もしまだ顧客データベースをお持ちでない場合は、企業にとって最大の資産になり得る情報ですので、ぜひ顧客登録をして顧客データベースをつくり上げる仕組みを構築してください。
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