データ分析とは?目的や正しいプロセス、手法、活用事例を解説

IT技術の発達や様々なツールの登場によって、ビジネスにデータ分析を活用することは身近になりました。しかし、そもそもデータ分析とは何か?どのように進めるべきなのか?明確に理解できていない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、データ分析の意味や、取り組むべき理由、正しい進め方などを解説します。
目次
データ分析とは
データ分析とは、データを集めて整理、編集し、過去から現在までがどういう状況になっているのかを客観的な数値で把握することです。データを整理し、必要に応じて可視化することで現状を正しく把握したり、データから規則性やデータ同士の関連性を見つけることで将来を予測しビジネス戦略を立てるために活用することができます。

データ分析に取り組むべき理由
データ分析によって、売上や利益を上げていくことが可能になる主な理由は以下の3つです。
- 正しく現状を把握することができる
- 精度の高い予測を立てることができる
- 素早い意思決定が可能になる
正しく現状を把握することができる
社内に蓄積されているデータは日々の経営活動で得られた結果です。それらを整理し分析することで、現状を正しく把握することができます。また、競合他社のデータや市場のデータとあわせて分析することで、より明確に自社の状況を知ることができます。
現状を正しく把握することができれば、自ずと自社の抱えている課題も明確になり取り組むべき対策なども明確にすることができます。
精度の高い予測を立てることができる
過去のデータを分析することで、規則性や因果関係を洗い出すことができます。その分析結果に基づいて精度の高い予測が可能になります。
現状の課題に対する対策についても、どのような対策を打つべきなのか、その対策を打つとどれくらいの効果が得られるのかなどの予測を立てることも可能になります。
素早い意思決定が可能になる
現状を把握することで課題が明確になり、それに対する戦略や精度の高い予測を立てることができれば、素早い意思決定が可能になります。
どこに課題があるか曖昧なまま闇雲に施策を展開していたり、明確な予測のないまま議論をしていた時よりもより速く課題を解決していくことができます。
データ分析は「目的設定」が9割
データ分析をして問題を解決しようとするとき、具体的な「目的」を決めないままに情報を集めたり、分析に入ったりしてしまうと、まったく役に立たない情報を集めたり、ムダな情報が集まってかえって頭が混乱したりで、結果として時間をムダにしてしまうことがよくあります。
一番問題なのは「膨大な数値データをとりあえず分析して、そこからわかったことをもとに次の施策を立てたい」といって、目的を決めずにデータ分析に入ったために、結局は何もわからず、迷路に迷い込んでしまうというパターンです。
正しくデータ分析を行うためには、具体的な課題を見つけ、現時点での仮説とその根拠は何か、仮説を確かめるにはどんな情報を集めてデータ分析する必要があるのかを検討することが大切です。
目的設定で、より速く的確な打ち手を導き出せる
スポーツや学生時代の試験勉強、あるいは自分自身の人生設計も同じですが、「目的」を明確にしておかなければ、データ分析の進め方を間違えてしまい、大幅に遠回りをしてしまう可能性が大いにあり得ます。
逆にいえば、ゴールを定めて、そのゴールに向かって最適なデータ分析をすることができれば、より速く的確な戦略や打ち手を導き出せることになります。
特に、時間の流れの速い現代のビジネスにおいては、いち早く自社の問題となっている原因を探り、問題を解決するための解答を導き出すことが、売上を伸ばすため、あるいは競合他社に勝つためには欠かせないのです。
しかし、実際には、目的を決めずにデータ分析を行っている企業の例をよく見聞きします。
クライアント企業の方が作成された数値データを見せていただくことも多いのですが、単に売上や利益などの数字を時系列で並べたものや、使った広告費に対してどの程度の売上があったのかなど、少し加工した程度のものが多くみられます。
もちろん今の状態を「把握」するためには意味のあるものだと思いますが、多くの場合、それだけでは必要な「打ち手」へとつなげることはできません。
データ分析に対して資金や人を投入しているのであれば、コストに見合う成果を得たいものです。そのためにも、目的の明確化が必要なのです。
もし最初から明確化することがちょっと難しいのであれば、はじめは「売上減少」などの漠然とした問題でもかまいません(あるいは売上増加といった目的でもかまいません)。徐々に目的を明確にしていけばよいのです。
目的を明確にすればするほど、そのあとの分析もスムーズに進みます。また、目的は具体化したほうが、それに対する打ち手もシンプルでわかりやすいものになります。
正しいデータ分析 5つのプロセス
最もよくないデータ分析の取り組み方は「膨大な数値データをとりあえず分析して、そこからわかったことをもとに次の施策を立てたい」といって、目的を決めずにデータ分析に入り、結局は何もわからず、迷路に迷い込んでしまうというパターンです。
そうならないためにも、具体的な課題を見つけ、現時点での仮説とその根拠は何か、仮説を確かめるにはどんな情報を集めてデータ分析する必要があるのかを検討する、以下のような正しいデータ分析のプロセスを踏むことが大切です。

❶ 目的の明確化
データ分析を行う時に、まず最初にやるべきことが「目的の明確化」です。
前述の通り、「目的」を決めないままにデータ分析を進めるのは非常に効率が悪く、何も成果を得られない可能性もあります。データに基づいて何をしたいのかを、明確にしたうえで次のステップに進みましょう。
❷ 仮説の洗い出し
仮説とは、その言葉の通り「仮の答え」になります。真偽はともかくとして、「ある論点に対する仮の答え」や「わかっていないことに関する仮の答え」です。たとえば「この事業は儲かるはずだ」や「この問題の原因はここにあるに違いない」といったことになります。
データ分析において、どのような場面でも必要になるのが、「仮説を構築すること」です。仮説は、データ分析や数字で検証するための拠り所となるのです。
しかし、仮説をすべて洗い出したら、その数は膨大なものになるでしょう。それらすべてを実行に移すことは、現実的ではありません。そのため、優先順位をつけて絞り込んでいく必要があります。
経験がある人であれば、統計的に過去の実績や勘によって打ち手を想定して、自然に優先順位づけをすることができるでしょう。とはいえ、実際はそうしたスキルを持っていない人が多いと思います。
そのような方にぜひおすすめしたいアプローチがあります。それは、「データ分析をしていくことで、複数の仮説の中から優先順位をつけていき、確度の高い打ち手を絞り込む」という手法です。この方法を使えば、複数出てきた仮説の中から最も問題解決に貢献しそうな仮説を選択することができ、経験や勘に頼ることなく確度の高い打ち手を絞り込んでいくことができます。
こう書くと、いかにも難しそうなのですが、例で考えてみれば簡単です。
たとえば、原因が何かはわからないのですが、「売上減少」という状況が起こり、社員がそれぞれの立場で売上減少の要因を考えた結果、10個の課題仮説が出たとします。本来はこの10個の課題仮説すべてに対して改善していきたいのですが、実際にはすべての仮説に対して人的リソースや時間的リソースをかけることはできません。しかし、少なくとも2~3個に絞り込まなければ現実的に難しいという場合、どうしても今までの経験や勘で絞り込まれることが多いのではないでしょうか。
そこで威力を発揮するのが、問題解決の考え方とデータ分析です。問題解決の考え方をすることで、課題とそれに対する解決策の仮説を洗い出すことができ、その仮説を証明するのは、データ分析になります。
では、具体的にどのように絞り込むかですが、図に示したように、データ分析を行うことで、たくさんの仮説の中から優先順位をつけることができます。
図 複数の仮説の中から優先順位をつける

たとえば「客数が減少しているのか、それとも客単価が減少しているのか」がわかれば、10個ある仮説はさらに絞り込めるでしょう。さらに、「客数の減少」が顕著であれば、「新規顧客の減少」「既存顧客のリピート率の減少」など原因と仮説と打ち手を絞り込むことができます。
このように、洗い出した仮説に対してより適切に「当たり」をつけていくことができるのがデータ分析なのです。「経験や勘」と「複数の仮説の中から優先順位をつけていく」方法の2つのアプローチ、どちらが絶対にいいということはありませんが、この記事をお読みの方には、後者のプロセスを実行することを強くおすすめします。
この仮説の立て方や絞り込み次第で、データ分析の精度は大きく異なるものになることを覚えておいてください。
仮説の立て方や絞り込みを行うときには、ロジカルシンキングという考え方が重要です。ロジカルシンキングのやり方は「ロジカルシンキングのやり方とは?問題解決に欠かせない思考法とフレームワーク」で解説しています。
❸ 分析方法の定義
ここでは、仮説を検証するために、どんな数値データが必要なのか、どのような分析方法を行えばよいのかを整理していきます。
具体的には、現在、自社が持っているデータのほか、あらゆるデータの中から、どのデータを使って分析を行うのかを検討します。
分析方法の定義については、課題や出てきた仮説によってやり方が大きく変わってくるため、❷で洗い出した仮説を検証するために何を分析していく必要があるのかを、抜け漏れなく整理することが、とても重要になります。
❹ 情報(データ)の収集
❸で定義したデータ分析方法に基づいて、必要な情報(使用するデータ)を探していきます。情報収集の方法や集めるデータについては非常に多岐にわたりますが、❸で定義した分析方法を実現させるためのデータを、いかにして集めて整理するかが、大きな鍵になってきます。
❺ 分析
集めた数値データを使った分析を進めていきます。データ分析は、経験の数によってスピードや精度は上がっていきますが、ポイントさえ押さえてしまえば、初心者でも一定の成果を出すことができるのもデータ分析です。
以上の一連の流れでデータ分析を進めていきます。
正しい手順でデータ分析を行ってから打ち手を決める
ここまでのデータ分析で自社の現状が明確になったら、その現状を踏まえて、自社のビジネスを成長させるための打ち手を決定していきます。データを分析して終わりではなく、データに基づく打ち手を決定し実行していくことが、本当に成果につながるデータマーケティングです。
例えば、十分な新規顧客が取れていないという分析結果が出たのであれば、「認知・集客不足」が解決すべきポイントとなりますし、店舗によって収益性に差が出ているという分析結果が出たのであれば、「低収益店舗の発生」が改善するポイントとなります。
改善ポイントは1つであるとは限りません。場合によっては3つ、4つ出てくるでしょう。それら出てきた改善ポイントをどう改善していくのかを考えていきます。
その際にもデータ分析の結果を活用します。「認知・集客不足」の原因が、他社と比較して広告宣伝やメディア露出の不足だとすると、「TV、雑誌等メディアを活用した継続的な販促策実施による認知度向上」が一つの改善方法になりますし、「低収益店舗の発生」の原因が勝ちパターンを外した出店にあるとすると、「出店基準の確立」や「店舗フォーマットの確立」が改善方法になってきます。
改善方法を導き出す“原因”についても、今まで行ってきた自社データの分析や競合他社との比較、消費者調査などから導き出されたデータ分析から洗い出されるものです。 今後成長していくに当たって、現状何が足りていないのか、どこに成長機会があるのかを明確にします。
参考:正しいデータ分析の手順とは?成果につながる5つのステップ
データ分析のスキルを身につけるコツ
データを分析するスキルを身につける方法はセミナーや本、動画講座、場合によっては大学などで学ぶこともできます。その時により効果的にスキルを身につけるコツをご紹介します。
データに触れる
1つ目はデータに触れることです。どのような媒体で学ぶかにかかわらず、実際にデータに触れて、整理、分析するという体験をしたほうが、データ分析のスキルは身につきやすいです。
これからデータ分析を学ぼうと考えている方は、ぜひデータに触れられる機会のある方法を選びましょう。
実際に仕事をする
2つ目は実際に仕事をすることです。仕事というのはデータ分析に関わるものでなくても構いません。社会人の人であれば目の前の仕事でいいですし、学生の方であればバイトなどでもいいです。
データ分析のスキルを身につけるといっても、知識やノウハウだけを身につけて実際の業務と結びつかなければビジネスに活用することはできません。
働いてみてお客様と接したり、自分の仕事がどのような結果に結びついているかなどを実際に体験することで、ビジネスに活きるデータ分析のスキルを身につけることにつながります。
分析に用いられるデータの例
実際にデータ分析に用いるデータは、私たちの普段の行動に関連するものがほとんどです。具体的には以下に挙げている「Web上で生成されるデータ」「オフィスや店舗で生成されるデータ」「日常生活の中で生成されるデータ」の1つ1つ、もしくはいくつかを組み合わせたものを組み合わせてデータ分析を行います。
- Web上で生成されるデータ
- Webサイトデータ:Webサイト上に公開されている記事などのデータ
- マルチメディアデータ:Web上に公開されている画像が動画などのデータ
- ソーシャルメディアデータ:SNS上の投稿やコメントなどのデータ
- ログデータ:Webサーバーに蓄積されているアクセス履歴などのデータ
- オフィスや店舗で生成されるデータ
- オフィスデータ:ビジネスでやり取りされるメールや文書のデータ
- カスタマーデータ:会員システムやCRMで管理されている顧客データ
- オペレーションデータ:会計やお問い合わせ対応履歴などのデータ
- 日常生活の中で生成されるデータ
- センサーデータ:人流や天候などに関するデータ
参考:
平成24年版 情報通信白書
ビッグデータの身近な例は?企業の活用事例も解説
データ分析の手法
データ分析を行う上で役立つ手法の一部をご紹介します。1つ1つの手法について詳しく理解する必要はありませんが、自身のビジネスに関連しそうなものがあれば、各リンクから具体的な取り組み方などもチェックしてみてください。
RFM分析
RFM分析(Recency frequency monetary analysis)とは顧客分析手法の1つで「一番最近に購入した顧客は誰か」「頻繁に購入する顧客は誰か」「一番お金を使ってくれている顧客は誰か」という3つの側面から顧客をランク付けする分析手法です。
買い方の異なる顧客をランク付けして、それぞれの傾向を分析することで適切なアプローチを行うことができます。
CPM分析
CPM分析とは、Customer Portfolio Management 分析の略で「購入回数」「購入金額」「最終購入日からの経過日数」によって顧客を分類し、自社の顧客の傾向を分析する手法です。主に、購入回数が少ない顧客をリピーターに育てていくために活用されます。
RFM分析は主に、最近商品を購入した顧客や購入頻度が高い顧客にターゲットを絞って、短期的に売上を伸ばしたい場合に活用される一方、CPM分析は顧客全体を分析して、購入頻度や顧客単価を高め、中長期的に安定して売上を伸ばしていく場合に活用されます。
参考:CPM分析とは?顧客分析でECサイトや店舗のリピート率を高める!
相関分析
相関分析は、2つのデータに関係性があるか明らかにする手法です。データの関係性を調べることで、関係性のある商品をまとめたり、意外な商品の関係性が見つけたりすることができます。
バスケット分析
バスケット分析とは、顧客がどのような商品を併売しているのかを分析する手法です。買い物かご(バスケット)の中にどのような商品が一緒に入っているのかを分析することから、バスケット分析と呼ばれます。
バスケット分析は主に「客単価」を高めるために用いられます。既存顧客の併売傾向を分析することで、併売を促す効果的な施策を立案し、1人当たりの購入金額を高めることを目指します。
参考:バスケット分析とは?商品分析でECサイトや店舗の客単価を高める!
データ分析の活用事例
最後に、実際にデータ分析を活用して売上を伸ばした企業の事例を解説します。
北欧、暮らしの道具店 4年で売上を約2倍に
株式会社クラシコムが運営する「北欧、暮らしの道具店」では、売上が順調に拡大している反面、売上が拡大したことで1つひとつの施策におけるリスクが大きくなっていました。また、スマホアプリのリリースなどに伴い分析できるデータが増え、データ活用業務が大きくなることが見込まれたため、効率的なデータ活用を目指し、データ分析チームを発足しました。
データ分析チームは、データをもとに施策を決める「ビジネスサイド」、施策を決めるうえで必要なデータを決定する「データアナリスト」、データアナリストが必要と判断したデータの抽出などを行う「エンジニアサイド」で構成され、専門的な知識がないメンバーでもデータ活用ができる基盤の構築に取り組みました。
その結果
- アプリ内の行動分析をもとに改善を行い、EC購入の6割がアプリ経由に
- SNSやメルマガの顧客動向を分析しフォーマットを改善
- 販売動向データを活用し、人気商品を開発
- データに基づく合理性の高い予算計画の作成
- 発注予測にでーたを活用し定価消化率を95%に
といった効果を生み出し、4年間で売上を約2倍にしています。

アスクル 新商品の売り上げが通常品の約7倍に
アスクル株式会社が運営するECサイト「LOHACO」では、購買データやアクセスデータなどのビッグデータを保有していました。それらのデータをもとに、自社だけでは解決できない課題を解決していくため、個人データを除くすべてのデータをオープン化しパートナー企業と分析、活用方法を検討する「LOHACO ECマーケティングラボ」を立ち上げました。
購買データや商品レビューなどの膨大なデータを分析することで、顧客のニーズが「商品が部屋に馴染むこと」にあると分析。その分析結果をもとに「暮らしになじむデザイン」の商品開発をスタート。
中身は同じで単価は1割ほど高い商品にもかかわらず、ユーザーニーズをとらえた商品デザインにより、通常商品に比べて年間で約7倍も売れています。
アスクル株式会社では、この他にもデータに基づいた併売施策の実施など、ビッグデータの活用に取り組むことで、6年間のうちに売上額を約25倍にしています。

参考:ビッグデータ活用 6つの事例!売上を2倍にした企業やコスト削減の事例を解説
当ブログではデータ分析の基本が学べる記事を公開しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
