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営業データの分析手法 | 事例、KPI設定、分析ツールについても解説

営業データの分析 3つの手法

企業が売上を上げていくうえで営業活動は欠かせない業務です。その営業活動を効率的に行ううえで、営業データの分析はとても効果的です。

そこでこの記事では営業データの分析手法について、弊社のクライアントの事例をもとに解説します。あわせて設定すべきKPIや分析に役立つツールについても解説しているのでぜひ参考にしてみてください。

営業データの分析が重要な理由

営業におけるデータ分析は、現状把握と目標達成に役立ちます。

例えば、現状を把握する上で

  • 取引先はコンサルティング業界が一番多く、少しずつ増えていて、現状大体500社くらいが直近1年間の間で取引が発生している

この程度のことはこの記事をお読みの皆さんも把握されているかと思います。しかし、年間3,000社との取引を目標としている場合、どのように500社から3,000社まで増やしていくのか、具体的なアクションプランまで落し込むことができるでしょうか。

  • お客様はコンサルティング業界がちょうど半数で、この3年間の間で毎年平均7.5%ずつ増加しており、直近年では245社で2億3,200万円の売上となっている
  • しかし、新規取引先は毎年10%ずつ増加しているものの、リピート率が低く3年前は75%がリピートしてたが直近年のリピート率は65%まで減少
  • リピート率をお客様の業種別に見ると、医療業界は85%と高い一方で、製造・メーカーは70%、コンサルティング業界は45%と年代ごとに大きく乖離
  • リピート率の高い取引先層は、〇〇カテゴリの商品を購入する割合がそうでない取引先層と比較すると●ポイント高い
  • 一方で、〇〇カテゴリはここ3年で売上減少傾向にあり、中でも1商品当りの販売数量が前年対比5%減で推移、特に上位商品にて大きく減少

このように、数字とともに具体的に現状が整理されるとどうでしょうか。

自社の強み・弱みが定量化されることにより、どこが伸ばせそうか、一方でどの部分を改善する必要があるのかが明確になります。

現状が定量的に明確になることによって、目標を実現するための自社の現時点での問題が数値化されます。また、同様に強みも定量的に洗い出されます。

そうすることで、現状から目標へと進んでいくに当って、どの数字をどの程度上げていかなければならないのかが明確化され、その数字を上げていくためには何をどの程度のスピードで実施していかなければならないのか、具体的なアクションプランにまで落し込むことができるのです。

このように、データ分析により、現状から目標へ向かうための具体的なアクションプランが落し込めるのです。

営業データの分析 3つの手法

営業データの主な分析手法は次の3つです。

  • 営業活動分析
  • 顧客分析
  • 商品分析

それぞれ事例をもとに解説していきます。

営業活動分析の事例

営業活動で取得できるデータはとても重要です。図表1における一番右側の「購入・取引」や「リピート」といったいわゆる取引実績(取引結果)はもちろん重要なのですが、その前段階の「比較検討」部分、ここが営業活動に当りますが、この部分もとても重要となります。

図表1 顧客の行動プロセス

なぜなら、この営業活動部分のデータが抜け漏れなく正確に取得できることで、どんな見込み客が受注に繋がりやすいのかや、各営業担当者の強みや課題の分析、そしてそれらデータ分析に基づいた営業活動の改善に繋げることができるからです。

受注率の高い獲得方法を分析する

それでは弊社クライアントの総合マーケティングコンサルティング会社E社の営業活動における蓄積データの分析結果を見てみましょう。

図表2は顧客獲得方法別の商談件数や受注件数、受注金額の構成比になります。

図表2 顧客獲得方法別の商談件数/受注件数/受注金額構成比

また、図表3は顧客獲得方法別の商談数と受注数、そして受注率および受注1件当りの平均受注金額になります。

図表3 顧客獲得方法別の商談および受注状況

受注率の高い獲得方法を知ることはとても重要です。

E社においては商談件数のうち半数を既存顧客のアップセルが占め、かつ受注率も高く、E社においては既存顧客が売上の基盤をつくっていると言えるでしょう。実際売上全体の4割を既存顧客のアップセルで占めています。

しかしその一方で、既存顧客のアップセルは受注単価が低くなってしまっていること、そして次の図表4のように、とは言えアップセルができているのは顧客全体の半数未満となっている(半数以上の顧客は継続できていない)ということです。

図表4 顧客の継続状況

既存顧客のRFM分析(参考:RFM分析とは?効率的な顧客アプローチを実現する顧客分析)をすることで、継続率の向上や取引頻度や取引金額を上げるための施策へと繋げることで、売上基盤をより強固なものとすることができるでしょう。

顧客分析の事例

次に、貿易コンサルティング企業C社の顧客分析を見ていきましょう。C社は、東京と大阪に拠点を持つ貿易コンサルティング会社で、企業の輸出入における支援をしている企業となります。データ分析を実施する前、C社は成長率が鈍化してきたことを問題として捉え、新規顧客を獲得するための戦略・施策を構築することを目的としていました。

そこで、まずは現状の顧客状況が新規顧客と既存顧客でどのような割合になっているのかを図表5のように整理しました。

図表5 C社の直近期における新規顧客/リピート顧客の構成比

図表5を見ると、C社において新規顧客数については全顧客の4割程度を占めているのに対し、売上や粗利の占める割合は1割程度となっています。新規の顧客の「数」は取れている一方で、売上や粗利といった「お金」への寄与度は高くないことが分かります。

ここから、新規顧客を獲得し、その上で既存顧客へと昇華させていくことが重要だと言うことが見て取れます。

離脱企業の状況をより細かく分析する

次に、図表6は、C社における取引企業と取引がなくなってしまった離脱企業の構成をグラフ化したものになります。

図表6 C社における取引企業と離脱企業の構成

図表6を見ると、半数以上の取引先が前期以前には取引があったにも関わらず、当期(今期)においては離脱してしまっていることが分かります。せっかく一度は取引が発生しているにも関わらず、1年以上取引がなくなってしまっている企業が半数以上あることが課題として挙げられます。

図表5で把握されたように、毎年全顧客数のうちの4割程度を新規顧客が占めていますが、売上や粗利に占める割合は1割程度となっています。既存顧客が売上、粗利の大部分を占めているということは、既存顧客をしっかりと継続させていくことの方が、売上・粗利拡大していく上では効果が高い、ということが分かります。

従って、C社においては、新規顧客獲得の前に、一度接点を持った既存顧客に対して、離脱させることなく継続して取引を続けていくことを重点とすることにしました。

C社における分析結果に基づいた戦略の構築は「顧客軸でのデータ分析で戦略を立てる!貿易コンサルティング企業のデータ分析事例」で、より詳しく解説しています。

商品分析の事例

商品分析は、弊社クライアントである出版社B社の事例をもとに解説します。

具体的な分析方法の前に、まずは出版業界の一般的なサプライチェーンをご説明します。出版社によっては直接書店へ販売している企業もありますが、多くの企業が下の図のように、取次を介して書店へ販売しています。

図表7 出版業界の一般的なサプライチェーン

また、返品自由なのも一つの特徴でしょう。他の業態でも買い取ってはもらえるものの返品自由なビジネスモデルはありますが、出版業界はその代表的な業態になるかと思います。従って、新刊を出した際には、初版部数を買い取ってもらえるもののその後エンドユーザである消費者に手に取ってもらえなければ、返品されて戻ってきます。

出版社によっては、返品された分の返金をするために新刊を出してとりあえず目の前のキャッシュを稼ぐという自転車操業となっている企業も少なくありません。

販売数の傾向を分析する

今回の事例は、そんな出版業界でビジネス書をメインで取り扱う企業(B社)の事例となります。

下の図表8を見ると、一部の大ヒットと呼ばれるような3ヶ月間で2万冊を超える実売数を出す書籍を除いて、3ヶ月間の実売数と3年間の実売数には相関があることが分かります。

図表8 発売後3 ヶ月間と3年間の書籍実売数の相関性

これはビジネスモデルにも起因しますが、ビジネス書においては、毎週のように新刊が出てくるため、3ヶ月で棚落ちする傾向が強く、それ故各出版社は3ヶ月でどれだけ売りを伸ばせるのか、を一つの指標としています。それ故、3ヶ月の売上で将来売上が決まってくる、と言っても過言ではなく、実際にB社においてもそのような傾向が出てい ることが分かります。

更に短期間での相関性を見てみましょう。下の図表9は、発売後1ヶ月間と3ヶ月間の書籍実売数をプロットしたグラフになりますが、こちらも相関係数が0.8と強い正の相関があることが分かります。

図表9 発売後1 ヶ月間と3 ヶ月間の書籍実売数の相関性

要は、1ヶ月間の売上が分かれば、その後の3ヶ月間の売上も分かり、生涯売上も予測がつく、というのがB社の大きな特徴でした。(あくまでB社の特徴であり、出版社が全てそうであるとは限りません。)

ちなみに、各図表のタイトルにある「実売数」というのは、書店で実際に消費者が購入した数になります。

更に発売後1ヶ月間と3ヶ月間の書籍実売数を、返品率別にプロットしたのが図下の図表10になります。

図表10

先ほどお伝えしたように、出版ビジネスは、一度取次や書店に送品しても返品されるビジネスモデルとなっています。返品率は30%〜40%とも言われています。下手すれば半数近くが返ってきてしまい、在庫として残ってしまうのです。しかもアパレルや雑貨等、他の物販ビジネスと異なり、値下げも難しい業態です。従って、返品率を下げるということが経営上、とても重要な指標となります。

上の図表10を確認すると、1ヶ月間の実売数と3ヶ月間の実売数より、返品率が大きく異なることが分かります。初版と言われる、発売時に制作・印刷した部数を出来る限り売り切る、ということはもちろんなのですが、それ以上に売れないものを重版しない、あるいは重版部数を抑えていくということが重要となってきます。

もちろんその一方で、売れる書籍はしっかり重版することが大切です。(重版とは、一度出版した書籍を、再度印刷出版することです。他の業態で言うところの追加発注に当ります)この重版の判断および各書籍をどの書店に対して営業していくのかが、出版した書籍当りの利益額(利益率)、消化率を最大化するために必要な施策となることが分かります。

営業活動において設定すべきKPI

営業活動によって売上を伸ばしていくためには、KPIの設定はとても重要です。営業活動における基本的なKPIは以下の5つです。

  • アプローチ件数(電話やメールなど、顧客との接触を持った件数)
  • 商談件数
  • 見積り提出件数
  • 成約件数
  • 合計受注額

上から下に行くほど受注に近いKPIになっています。

設定する目標値は企業の扱っている商品や営業体制によって変わるため、自社の過去実績や目標値から逆算して設定していくのが基本的な方法です。この場合も、過去の受注データや失注データを分析することで精度の高い目標値を設定することができます。

より細かくKPIを設定する場合は、以下のような指標で目標を設定する場合もあります。

  • 平均受注額
  • 新規顧客売上
  • 既存顧客売上
  • 転換率(アプローチ件数に対する商談件数の割合や、商談件数に対する成約件数の割合など)
  • リードタイム(最初のアプローチから受注までの日数や、最初のアプローチから受注までの日数など)
  • 解約件数
  • クレーム数

ただしKPIは細かく設定しすぎると何が重要か分からなくなってしまうため、自社にとって重要な指標を取捨選択することが大切です。

営業データの分析に役立つツール

営業データの分析は、規模が小さければエクセルなどを使っても十分対応できますが、取引件数が多かったり担当者が多くいたりする場合には専用の管理ツールの導入を検討しましょう。

CRM/SFA

CRMとは「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」の略で、顧客の情報を管理するシステムのことです、SFAは「セールス・フォース・オートメーション」の略で営業活動を支援するシステムのことです。いずれも、顧客情報を入力しておくことで前述のKPIの達成率を手軽に把握したり、顧客との取引状況を共有するなどの機能を持っています。

CRMとSFAはもともと別のシステムとして様々な企業から提供されていますが、近年はその機能に大きな違いはなくなっており、概ね同じシステムだと考えても差し支えはなくなってきています。

CRM/SFAはツール内で、今回ご紹介したような分析ができるものもあれば、可視化ツールと連携することで細かい分析ができるものもあります。

営業データの分析を強化するためには、自社にとって必要な機能を持ったツールを探して導入を検討するのもおすすめです。

MA

MAとは「マーケティングオートメーション」の略で、マーケティング活動の自動化システムのことです。MAはメールアプローチやアプローチするべき顧客の選定などを自動化することを目的としたツールです。

MAの最終的な目標はマーケティング活動の自動化ですが、それを実現するために顧客一人ひとりの行動データを細かく分析することができる機能がついています。

たとえば、特定のユーザーがどのページを訪問したか、訪問したページにどれくらいの時間滞在したかなどの分析も可能です。

CRA/SFAとの連携が可能なものや、CRA/SFA機能を持ったものなどもあるため、導入を検討する際には自社ですでに導入しているツールとの相性もチェックしましょう。

BI

BIとは「ビジネスインテリジェンス」の略で、様々な形式のデータを統合して可視化することを主な目的としたシステムです。

CRM/SFA、MAはもちろん、社内外のあらゆるデータを統合して可視化することで、素早く適切な意思決定を実現することができます。

ただし、データの統合や可視化の設計には専門的な知識を要する部分も多いため、データサイエンティストなどの力を借りることで効率よく運用できます。

当ブログではこの他にも様々な視点からのデータ分析が学べる記事を公開しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

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