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顧客データの活用事例 | データ分析でマーケティング戦略を立案する方法

顧客軸でのデータ分析で戦略を立てる!貿易コンサルティング企業のデータ分析事例

どんなビジネスにおいても、自社の商品やサービスを購入してくれる顧客がいるからこそ事業が成り立っています。この顧客を分析することで、新規顧客を増やしていくためのキーとなるポイントや、顧客ロイヤリティを高める(ヘビー顧客としていく)ためのポイントが把握されます。

そこでこの記事では、弊社クライアントの事例をもとに、顧客データを活用してマーケティング戦略を立案する方法を解説します。

この記事では、弊社クライアントの事例をもとに、顧客(取引先)軸でのデータ分析事例をご紹介します。

データ分析で現状を把握する

まずは弊社クライアントである貿易コンサルティング企業C社の顧客分析を見ていきましょう。C社は、東京と大阪に拠点を持つ貿易コンサルティング会社で、企業の輸出入における支援をしている企業となります。データ分析を実施する前、C社は成長率が鈍化してきたことを問題として捉え、新規顧客を獲得するための戦略・施策を構築することを目的としていました。

そこで、まずは現状の顧客状況が新規顧客と既存顧客でどのような割合になっているのかを図表1のように整理しました。

図表1 C社の直近期における新規顧客/リピート顧客の構成比

図表1を見ると、C社において新規顧客数については全顧客の4割程度を占めているのに対し、売上や粗利の占める割合は1割程度となっています。新規の顧客の「数」は取れている一方で、売上や粗利といった「お金」への寄与度は高くないことが分かります。

ここから、新規顧客を獲得し、その上で既存顧客へと昇華させていくことが重要だと言うことが見て取れます。

離脱企業の状況をより細かく分析する

次に、図表2は、C社における取引企業と取引がなくなってしまった離脱企業の構成をグラフ化したものになります。

2 C社における取引企業と離脱企業の構成

図表2を見ると、半数以上の取引先が前期以前には取引があったにも関わらず、当期(今期)においては離脱してしまっていることが分かります。せっかく一度は取引が発生しているにも関わらず、1年以上取引がなくなってしまっている企業が半数以上あることが課題として挙げられます。

図表1で把握されたように、毎年全顧客数のうちの4割程度を新規顧客が占めていますが、売上や粗利に占める割合は1割程度となっています。既存顧客が売上、粗利の大部分を占めているということは、既存顧客をしっかりと継続させていくことの方が、売上・粗利拡大していく上では効果が高い、ということが分かります。

従って、C社においては、新規顧客獲得の前に、一度接点を持った既存顧客に対して、離脱させることなく継続して取引を続けていくことを重点とすることにしました。

既存顧客の継続率を高めるためのRFM分析

では既存顧客の継続率を高めていくにはどうすれば良いでしょうか。

BtoB事業においても活用できるデータ分析の1つがRFM分析になります。

BtoC業態においては、顧客情報が取得できている会員の継続率向上や年間購入金額の拡大、休眠顧客の復活などの施策を打つ上で活用される分析になりますが、BtoB事業においても有用です。BtoB事業は取引先である顧客についての情報は基本的に全て蓄積されているため、全顧客が分析対象となるためです。

さて、ご存知の方も多いと思いますが、顧客の購入状況に応じた打ち手を考える上で、RFM( Recency frequency monetary analysys)分析という「よい顧客を見分ける」方法が便利です。

誰が一番最近取引した顧客か、頻繁に取引する顧客は誰か、一番お金を使ってくれている顧客は誰か、という3つの側面から分析します。細かい説明は省きますが、RFMのRはRecency(リセンシー)で、「最新購買(取引)日」になります。ある顧客が最後に取引した日を判断材料とするもので、最近取引した顧客のほうが、何年も前に取引した顧客よりよい顧客と考えるものです。

FはFrequency(フリークエンシー)です。「購買(取引)頻度」になります。フリークエンシーは、顧客がどの程度頻繁に取引してくれたかを判断材料とするもので、頻度が高いほどよい顧客と考えます。

MはMonetary(マネタリー)です。「購買(取引)金額」になります。マネタリーは、顧客の取引金額の合計で、一般的にこの金額が大きいほどよい顧客と考えることができます。

RFMそれぞれの指標の見方は以下のようになります。

① Rが高いほど将来の企業収益に貢献してくれる可能性が高い
② Rが低ければFやMが高くても他社に奪われている可能性が高い
③Rが同じならFが高いほど常連顧客
④Rが同じならFやMが高いほど購買力がある顧客
⑤RやFが高くてもMが少ない顧客は購買力が低い
⑥Fが低くMが高い顧客はRの高いほうがよい顧客
⑦ Fが上がらないか下がっている顧客は他社に奪われている可能性が高い

このRFMでは、その名前の通りの順番で優先順位が高くなります。

参考:RFM分析とは?具体的なやり方を事例をもとに解説

重要なのは活用の仕方になります。

自社なりにRFMそれぞれにランクを付けていきます。大体5 段階評価をすることが多いです。例えば、Rであれば、1ヶ月以内の取引先は「5」、1-3ヶ月の間であれば「4」というようにランクを付けていきます。同じようにFとMも付けます。

最終的にそれぞれ3つを組み合わせ、「555」となった顧客が最もロイヤリティの高い顧客になり、「111」がその反対で一元客あるいは休眠となってしまっている顧客となります。そしてそれぞれのランクに応じて施策を変えていくのですが、「111」〜「555」それぞれで分けてしまうと125通りにもなってしまうので、ある程度の塊にマージして、それぞれのセグメントで施策を打っていきます。

分析に基づいたマーケティング戦略を構築する

それでは、C社について見てみましょう。

C社においては、RFMのうち、FとMを用いて、図表3のように年間の取引状況に応じてS〜Fランクに分類しました。

図表3 C 社のランク別顧客数と構成比

そして、そのランクに応じてマーケティング施策の全体像を表したのが、図表4になります。

図表4 C社のランク別顧客数とマーケティング施策の全体像


①再度取引してもらう
直近1年間において取引がなくなってしまっている休眠顧客に対して、再度取引してもらう施策を打ちます。

②定期的にリピートしてもらう
取引はあるものの半年に1回以下の頻度の低い顧客となります。定期的にリピートしてもらうための施策を打ちます。

③高額な取引をしてもらう
定期的に取引は発生しているものの粗利額の低い顧客となります。より高額な取引をしてもらうための施策を打ちます。

更に図表5のように顧客のランク別に取引商品(やサービス)の取引状況をクロスで分析することで、ランクを上げるために何の商品をフックにアプローチすれば良いのかまで落し込むことができるのです。

図表5 C 社のランク別顧客の取引商品に応じたアプローチ案

このようにC社においても、今回のデータ分析を踏まえたマーケティングおよび営業施策を構築し、図表6のようなデータを可視化する仕組みを構築し、検証・改善を繰り返すことで売上・粗利の増加を目指しています。

図表6 C社におけるデータ可視化イメージ

データ分析により、自社の売上や利益を上げるためのポイントは明確になります。しかし、それで終わりではありません。そこからがスタートです。

重要なのはデータ分析結果をもとに戦略や施策に落し込んだ後も、データを見ながら検証・改善を繰り返していくことなのです。そうすることで、スピード、精度ともに高いレベルでのPDCAを回すことができるのです。

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