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売上分析とは?事例を元に取り組み方を解説

売上分析とは?事例を元に取り組み方を解説

この記事では、売上データの分析によって得られるメリットや取り組み方を解説します。

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売上分析とは

売上分析とは売上データから自社の課題を明確にしたり、適切な打ち手を構築するためのデータ分析ことです。

顧客別、営業担当者別、商品別といった視点から分析することで、課題となっているポイントや、自社の勝ちパターンを見つけることを目指します。

売上分析を行うメリット

売上分析を行うことで次のようなメリットを得ることができます。

勝ち筋が分かる

顧客別、営業担当者別、商品別といった視点から売上を分析することで、他と比べて大きな売上を生み出している顧客や担当者、商品を見つけることができます。

たとえば他の商品と比べて売上に結びついている商品が明確になれば、その商品の販促にコストをかけるなどすることで、効率よく売上を伸ばすことができるはずです。

課題が明確になる

勝ち筋が明確になれば、同時に課題も明確にすることができます。たとえばコストの売上を分析することで利益を圧迫しているコストを明確にすることもできます。

分析結果に基づいてコストを見直すことで事業の収益性を高めることにつながります。

迅速な意思決定が可能になる

上記のように分析に基づいて勝ち筋や課題を明確にすることができれば、意思決定のための議論をスムーズに進めることができます。また、データから取るべき対策が明確にできれば打ち合わせなどを省略し現場だけで迅速な意思決定を実現することもできます。

売上分析のやり方

今回は「化粧品メーカーE社」の事例をもとに、売上を増加させる方法を導き出すデータ分析を解説します。

Case Study
E社は卸と直販の両方で売上を立てているのですが、数年前より、DMやカタログ、そしてウェブサイトといった自社チャネルを用いた「通販」での直販の販売強化に比重を置いています。
また、昨年から広告費を増やして売上増加を図っているのですが、なかなか思うように売上が伸びず、コスト高となっています。そこで、今以上のコストはかけずに売上を上げたいと考えました。

データ分析は、下記の手順に沿って行います。

データ分析の手順
  1. 目的の明確化
  2. 仮説の絞り込み
  3. 分析方法の定義
  4. 情報(データ)の収集
  5. 分析

手順の詳細は「正しいデータ分析の手順とは?成果につながる5つのステップ」で解説しています。

1.目的の明確化

このケースの目的は「コストを抑えた上で売上増加に向けた施策を構築する」ことになります。

2.仮説の洗い出しと絞り込み

収益性が落ちているという現状から、次の図表1のようなロジックツリーで仮説を洗い出しました。

図表1 このケースにおける仮説

このケースにおける仮説

ここから広告宣伝費などのコストのかけ方が適切でないことが、十分に既存顧客のリピート率が上がらず、収益を圧迫しているという仮説を立てました。 (ロジックツリーや、課題と仮説を洗い出すための考え方は「問題解決に欠かせないロジカルシンキングのやり方」で詳しく解説しています。)

3.分析方法の定義

以下の2つの視点で分析を行います。

1.コスト効率の見極め
→ 投入している広告費に対する売上効果を明確にする
2.顧客属性別の購入状況の見極め
→ 顧客の買い方(頻度・累積購入額・最新購入日)別の傾向を把握する

4.情報(データ)の収集

「コスト効率の見極め」「顧客属性別の購入状況の見極め」のため、「広告コスト別の売上状況」「顧客ごとの購入状況」のデータを収集します。

5.分析 /「コスト削減」のデータ分析

コスト効率の現状を知る

ここからは、実際にデータを整理し分析していきます。

まずは、大きな傾向として現状のコスト効率を把握します。

E社のP/L推移〈図表2〉は、コストをかけて売上増加を図り始めた2018年度とその前年の2017年度の売上高、および両者の比較です。

図表2  E 社のP/L の推移

E 社のP/L の推移

2017年度から2018年度にかけて、広告宣伝費を増加させた分、売上高も増加していますが、増加率は5%程度と、広告費の増加分すら回収できていません。

その結果、営業利益および営業利益率を大きく減少させており、効率が悪くなっていることが一目瞭然です。

顧客の傾向を知る

では、なぜE社ではこんなにも広告宣伝費が増加したのでしょうか? それは、キャンペーンのDMに力を入れ、毎月きれいなパンフレットを作成して、1万5,000人の登録会員全員にDMを送付していたためです。

しかし、広告費をつぎ込んで直販の売上を増加させるという狙いが大きく外れ、想定した売上には程遠い結果となってしまいました。

「お客様と接する」機会であれば、実際に会っていなくても接客です。今回の場合、DMがお客様の手元に届くということは、そのDMがお客様に接客をしていることになります。しかし、その接客がお客様の顔を見ておらず、ニーズを捉えていないものとなってしまっていたのです。

そこで、実際にお客様がどのような買い方をしているのか分析してみます。

図表3を見ると、年間購入回数が1回というお客様が全体の半数近くを占めていることがわかります。また、年間2回は22%、年間3回は12%と、購入回数が増えるにつれて構成比は減少していて、1年間に購入した全人数は約6,500人となっています。しかし、先ほど説明したように、E社は毎月、すべての登録会員1万5,000人に対してDMを打っています。

図表3 E社の顧客の購入回数状況

E社の顧客の購入回数状況

1年間に1回でも購入した人数が6,500人なので、約8,500人は1年以上購入していないお客様となっています。

DMを打つことで、購入頻度の低いお客様の購入回数を底上げすることを目指したのですが、結果にはつながらなかったことがわかります。

そもそも、買い方の異なるお客様に対して同じDMを打っていても、十分な効果を得られません。

毎月のように買っていただいているお客様と、年に1回しか買わないお客様、ここ1年まったく買っていないお客様とでは、その商品に対する気持ちが異なります。それぞれのお客様の気持ちに応えるように、DMを実施することが大切なのです。

よい顧客を見分ける方法(RFM分析)

お客様の購入状況に応じた打ち手を考えるためには、RFM分析(Recency frequency monetary analysys)という「よい顧客を見分ける」方法が便利です。

RFM分析の3つの側面
  1. Recency(リセンシー):一番最近に購入した顧客は誰か
  2. Frequency(フリークエンシー):頻繁に購入する顧客は誰か
  3. Monetary(マネタリー):一番お金を使ってくれている顧客は誰か

参考:RFM分析とは?具体的なやり方を事例をもとに解説

RFM分析を行うには、データベースに購買履歴が記録されていることが前提となります。購買状況を時系列で追えないような顧客管理の方法の場合、RFM分析はできません。E社のように直接お客様へ販売していて、かつ会員登録をさせている企業だけができる分析法です。

RFM分析によって数値化された顧客ごとに最適の施策を構築して実行することが理想的な営業といえます。

顧客の属性別の傾向を分析する

E社のRFM分析〈図表4〉を見てください。リセンシー(最新購入経過月)が近いほど、フリークエンシー(年間購入回数)やマネタリー(年間購入金額)の高い顧客が多くなっています。一方、リセンシーが遠いほどフリークエンシーやマネタリーも低い顧客が多くなっていることがわかります。

図表4 E 社のRFM分析

顧客全体の傾向を掴んだことで、購入頻度の高い顧客と低い顧客、購入していない顧客のそれぞれに対して、同じようなDMを頻繁に打ちすぎていることが、広告宣伝費に対して十分な売上が上がっていない要因であるとわかりました。

具体的な打ち手につなげるために、もう少し顧客の傾向を深掘りしていきます。

E社は電話やFAX、ウェブサイトと、さまざまな通販チャネルを活用しています。電話やFAXなどで購入しているお客様に関しては、ハガキや封書でのDMが適切な方法となるでしょう。

一方、ウェブサイトで購入しているようなお客様には、メールマガジンや、Facebook・LINEなどのSNSツールが効果的な販促方法となります。

なぜなら、人はできるだけ簡単に購入したいからです。そのためには、使用するチャネルを変更したくありません。変更するのは面倒くさいと感じてしまうのです。ハガキDMを見て購入したいと思った商品があった場合、パソコンを開くのは面倒くさいと感じると思われます。その場で、電話で注文したいと思うでしょう。反対に、電子メールでメールマガジンが送られてきて「注文はこちらの電話番号におかけください」と書いてあったら「購入ウェブサイトのURLを教えてよ!」と思うはずです。

テレビショッピングもよい例です。その場で電話をかけさせますよね。よくあるテレビCMのように「続きはウェブで」ではないですが「購入はウェブで」などと案内している通販番組はありません。これも番組を見ているお客様ができるだけ買いやすいようにするためなのです。

したがって、E社においても、普段購入しているチャネルに応じた販促施策が必要と考えられます。

そこで、図表5のチャネル別の購入顧客数を見たところ、チャネルによって顧客の年代層が異なることがわかります。

図表5 チャネル別の購入顧客数

チャネル別の購入顧客数

PCやSP(スマートフォン)などウェブサイトでの購入は、20代後半~40代後半が中心となっています。一方、電話やFAX、ハガキといったアナログでの購入は、50代~70代が中心となっています。定期お届けでの購入は、その中間くらいで40代~60代が中心と、購入チャネルによって顧客層が分かれていることが判明しました。

以上の分析結果より、次のような仮説が導き出されます。

仮説
  • 1年間に1回以上購入している顧客と、1年間で1回も購入していない休眠顧客に分けて販促施策を実施することで、コスト効率が向上するのではないか。
  • ウェブサイトで購入している顧客はメールマガジンやSNSツールによる販促中心、電話やFAXなどのアナログ媒体で購入に至っている顧客にはハガキDM中心に販促施策を実施することで、購入率が上がるのではないか。

打ち手の検討/売上をキープしたまま広告費を絞る

実際に、先ほどの2つの仮説をもとに広告費を絞りました。

具体的には、1年間に1回以上購入のある顧客にだけDMを打つこととし、頻度も「1カ月に1回」から「2カ月に1回」へと半分に減らすということを試しています。

その結果、今まで1万5,000人に対してDMを打っていたのが、対象が6,500人程度に減り、かつ回数も半分になったため、コストが大幅に削減されたにも関わらず、売上は横ばいをキープしたのです。コストをかけない分、利益額は大幅増加です。

また、既存顧客に対してコストを削った分、1年以上購入のない休眠顧客に再度自社商品を使ってもらうための掘り起こしとして、休眠顧客限定のキャンペーンDMを打ちました。

約8,500人に対してDMを打ったところ、反応率1%を超える100人以上に再度購入してもらえました。

このように、データ分析によって顧客の状況に見合った販促施策を行うことで、コストを削減しながら売上を増加させることができるのです。

E社の今後の課題としては、毎年、半数以上も休眠顧客を出してしまっていることです。休眠顧客を出さないためには、リピート顧客を増やすことが重要です。

化粧品だと特にそうですが、その場合「定期購入」をしてもらうのが最も効果的です。実際に、E社のチャネル別の購入状況〈図表6〉を見ると、「定期お届け」が他の購入チャネルと比較して購入金額も購入回数も倍以上となっています。

図表6 E 社のチャネル別の購入状況

E 社のチャネル別の購入状況
E 社のチャネル別の購入状況2

商品やサービスを購入しているのはお客様であり、お客様の プロフィールによって「どんな買い方をしているのか」さえわ かれば、同じようなプロフィール層に適切なアプローチをする ことができます。

また、新たな商品やサービスの開発をした際にも、顧客情報 を持っているので、お客様に対して新商品・新サービスの告知 をすることができます。

開発前にお客様へアンケートを取って要望を吸い上げること や、トライアル販売による検証を行うこともできます。

もともと自社のお客様であれば、そこにかかる広告コストは、 新たに新規のお客様を開拓するよりもはるかに安くなります。 すでに手元にある「お客様の情報」をデータ分析することで、 「コストをかけずに売上を上げる」ことが可能なのです。

売上データ分析に活用できるツール

最後に、売上データの分析に活用できる3つのツールについて解説します。

エクセル

事業規模などにもよりますが、データ量が多くない場合にはエクセルを使った売上分析でも十分な成果を得ることができます。

分析ツールやピボットテーブルといった機能を使ったデータ分析はこのブログでも解説しています。また、エクセルを使った分析手法の解説書なども多くあるため、これからデータ分析に取り組んでみようろ考えている方は一度チェックしてみるのもおすすめです。

CRM/SFA

CRMとは「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」の略で、顧客の情報を管理するシステムのことです、SFAは「セールス・フォース・オートメーション」の略で営業活動を支援するシステムのことです。いずれも、顧客情報を入力しておくことで前述のKPIの達成率を手軽に把握したり、顧客との取引状況を共有するなどの機能を持っています。

CRMとSFAはもともと別のシステムとして様々な企業から提供されていますが、近年はその機能に大きな違いはなくなっており、概ね同じシステムだと考えても差し支えはなくなってきています。

CRM/SFAはツール内で、売上データの分析ができるものもあれば、可視化ツールと連携することで細かい分析ができるものもあります。

売上データの分析を強化するためには、自社にとって必要な機能を持ったツールを探して導入を検討するのがおすすめです。

BIツール

BIとは「ビジネスインテリジェンス」の略で、様々な形式のデータを統合して可視化することを主な目的としたシステムです。

エクセルやCRM/SFA内の売上データもちろん、社内外のあらゆるデータを統合して可視化することで、素早く適切な意思決定を実現することができます。

ただし、データの統合や可視化の設計には専門的な知識を要する部分も多いため、データサイエンティストなどの力を借りることで効率よく運用できます。

【出典】齋藤健太.問題解決のためのデータ分析

※この事例では、商品名などは伏せているほか、実態から大きく外れない範囲で数値データを加工していますが、実際に近いケースを扱うことで、この記事をお読みのみなさんが現実感を持ちやすく、現場のニーズを当てはめやすいものとなるよう構成しています。

当ブログではこの他にも様々な視点からのデータ分析が学べる記事を公開しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

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