データドリブン経営とは?重要性や成功事例を解説

近年、企業経営において「データドリブン」という考え方が注目されています。市場の変化が激しく、顧客のニーズが多様化する中、経験や勘に頼るのではなく、データをもとに意思決定を行うことが求められています。
データドリブン経営を実践することで、企業はより精度の高い戦略を立案し、施策の効果を最大化することが可能になります。そこでこの記事では、データドリブン経営の概要やその重要性、実現するためのポイントについて詳しく解説します。
目次
データドリブン経営とは
データドリブン経営とは、データをもとに戦略の立案や施策の実行を行う経営です。
実行した施策についてもデータで検証・改善し、ときには戦略も再構築するという、常にデータを起点に経営していくスタイルです。
データの蓄積から運用までの仕組みが必要
下の図は、データドリブン経営を実現するために必要な仕組みを図解したものです。

この図のように、各種データが社内の基幹システム等に蓄積され、それを必要な分析・可視化を行い戦略や施策検討に活かし、実行していく、そして運用・改善を繰り返していくという仕組みを構築することで、データドリブン経営を実現することができます。
データドリブン経営とDXの関係
データドリブンと似た意味合いで使われる言葉にDXがあります。
DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、データをはじめとしたITツールなど、デジタル技術を活用してビジネスに変革をもたらすことです。
一方、データドリブン経営では、特にデータに着目しデータの価値を最大化してビジネスを成長させていくことを目指します。つまりデータドリブン経営は、企業がDXを実現するための一つの方法だと言えます。
データドリブン経営の必要性
データドリブン経営が出来ている企業とそうでない企業との間には明確な差が生まれます。
少し前のデータですが、統計上(有意差有り)、データドリブン経営ができている企業は、そうでない企業よりも、売上増加している割合が11.4%構成比として多く、売上減少している割合が13.1%少ない結果が出ています。

調査対象:中小企業783社
調査時点:2016年1月
Source:一般財団法人 商工総合研究所『中小企業のIT活用 平成27年』
つまり、データドリブン経営を実現することで売上成長出来る強い基盤を作ることができるのです。
課題は「ビジネス部門とデータ部門の壁」
しかし、実際にはデータドリブン経営を実現できている企業は多くありません。下図は中小企業経営者を対象に行われた調査結果です。この調査では約半数の企業経営者が「データドリブン経営を目指したいが十分に出来ていない」と回答しています。

Source:弊社Webアンケート(中小企業経営者500名)2021年7月
データドリブン経営を実現できない原因には
- 人材が確保できない
- 適切な社内体制が構築できない
- スキルが不足している
- 費用対効果が分からない
- やり方が分からない
など様々なケースがありますが、多くの企業にとっての原因は
「ビジネス部門とデータ部門の連携がうまくいかないこと」
にあります。
なぜ部門間に壁が生じるのか
下図は、冒頭でもご紹介したデータドリブン経営の全体図です。

左側のデータ部門から右側のビジネス部門に繋げていくことでデータドリブン経営が実現されます。しかし、この2つの部門の間に大きな壁があるのです。
ビジネス部門に属しているのは主に経営者、施策を行う実務責任者、担当者です。ビジネス部門の目的は、売上を伸ばすことです。売上を伸ばすためには、どのようにデータを扱っていけばいいのか、という視点で考えます。
一方、データ部門に属すのは、主にシステム部門や外注しているIT系の企業となります。こちらはデータをどのように取り扱っていくのかを主目的として考えます。
この間が繋がらないケースが非常に多いです。
ビジネス部門では、戦略を立てたり施策を実行する上でどのようなデータ分析や可視化をすればいいのか、そのためにどんなデータがそもそも必要なのかが分からないことが多いです。
一方データ部門では、そもそもビジネスを理解できていないことが多いです。その結果いろんな分析結果を提示してくれるものの、ビジネスに活かせるデータになっていないということがよく起こります。
こういったケースのように、ビジネス部門とデータ部門の間に壁が生じていることがデータドリブン経営実現の大きな課題となります。
データドリブン経営を実現するための3つのポイント
データドリブン経営を実現するためには、ビジネス部門とデータ部門がうまく連携できる状態を作る必要があります。そのような状態を作るためには以下のようなポイントを押さえることが重要です。
ビジネスを主体としてデータを活用する
データドリブン経営はデータを起点としてビジネスを推進していくことです。しかし間違ってはいけないのは、データドリブン経営の目的はあくまでビジネスの推進である、ということです。
つまり、ビジネスを主体として、データをどう扱うのかを考えることが重要なのです。
データを起点として経営を行うからと言って、
「蓄積されているデータを使ってビジネスに活かそう」
という取り組み方をしていてはデータ活用はうまくいきません。正しいデータドリブン経営とは
「ビジネスを推進するために必要なデータを活用していくこと」
です。この目的(ビジネス)と手段(データ)を反対にしないように気を付けてください。
データ部門とビジネス部門をつなげる役割を設ける
データドリブン経営を実現するためには、ビジネスを理解した上でデータの活用方法を設計する必要があります。そのためにはデータとビジネスの両方を理解した人材による、2つの部門を繋げる役割を設けることが効果的です。
日本においてそのような人材の数はあまり多くないため、採用活動で見つけ出したり社内で育成したりするのは難易度が高いのが実情です。そのため、データとビジネスをつなげる役割を担える外部企業のサポートを活用することで、効率よくデータドリブン経営を実現することができます。
トップダウンで実行する
データドリブンの課題はデータ部門とビジネス部門の間の壁にあることを繰り返し述べてきましたが、より具体的にいうとこの壁は社長とシステム部の間の壁です。この壁をなくし、ビジネスを軸としたデータ活用を実現していくためには、ビジネス部門のトップである経営者の強い意思決定が必要です。
先ほども解説した上図を見ても分かる通り、データとビジネスを繋げるプロセスは複数の取り組み方があります。「広告を打つ」「営業担当者を採用する」と言ったすぐ結果が出るような分かりやすいものではなく、しっかり自社の経営に根付かせることが重要です。
そのために欠かせないのが、トップダウンでの強い意思決定なのです。
また、ビジネスを軸としてデータを取り扱うためには、システム部の前向きな連携も不可欠です。保守、運用といった、データ活用の守りの分野を担うシステム部ですが、データドリブン経営を推進するためには攻めの改修も必要になってきます。その際、柔軟に対応できるのか、実務を担うシステム部が積極的に取り組んで前に進められるかどうかも重要となります。
ぜひ、改めて自社の状況を整理し、データドリブン経営を目指していただければと思います。
データドリブン経営の成功事例
ワークマン
データドリブン経営が出来ている企業で有名なのは、ワークマンでしょう。
同社は「エクセル経営」を経営戦略の一つにも掲げており、私の記憶ではもう12年以上に渡り社長含めて全員が同社内で確立されたエクセルでの分析研修を受け、それを各事業(商品開発や同社売上の大半を占めるFC店舗支援等)に活かしています。
グッディ
また、九州エリアに拠点を置くホームセンター業態のグッディもデータドリブン経営が出来ている一社でしょう。
同社は「グッディデータアカデミー」という、こちらはTableauというBIツールを使った研修制度を確立してデータをビジネスに取り入れています。
グッディ社も10年近くデータドリブンな経営や事業推進を行っており、今では様々な企業からやり方の相談を受けているようです。
雑貨小売企業
ワークマン社やグッディ社のような中堅・大企業でなくてもデータドリブン経営は可能です。
下図は、弊社が支援している企業の売上推移になります。

データドリブン支援の実施内容
- アクセスデータや販売実績データの分析結果をもとに、各種マーケティング施策を強化・改善
- 顧客分析結果をもとに、顧客のリピート化施策を強化
- 顧客別の購買商品の分析結果から、企画内容の改善や商品開発へ反映
- データドリブンな組織体制へと変革、個々人がデータに基づいた意思決定、検証・改善の実現
データを起点に戦略を組み立て、施策の実行・検証・改善を繰り返していくことで売上成長に繋がっています。何よりデータドリブンで考え実行できる組織へと変わっていくため、経営者がいなくても自走できる会社へと成長していきます。
まとめ
この記事ではデータドリブン経営に取り組む意義や、取り組む際のポイントについて解説していきました。
データドリブン経営は、単なるデータ活用ではなく、ビジネスの成長を目的とした経営手法です。成功の鍵は、ビジネス部門とデータ部門の連携を強化し、トップダウンで推進することにあります。これからの時代、データを最大限に活用し、競争力を高めるためにも、データドリブン経営への取り組みが不可欠です。ぜひ自社の状況を見直し、データを経営の軸に据える第一歩を踏み出してみてください。
弊社ではDXやデータドリブン経営実現の支援も行っています。データドリブン経営の実現を目指したいと考えている方はぜひ一度お気軽にご相談ください。
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