掲載料を払ったのに応募がゼロ、あるいは応募があっても採用に至らない。そんな「掛け捨て」の悔しさを繰り返しているオーナスタッフは一生懸命働いているのに、月末になると手元に利益が残らない。
そんな悩みを抱える美容室オーナーは、少なくありません。
売上が伸びても利益が残らない原因の多くは、原価率のコントロール不足にあります。
この記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。
- 美容室における売上原価・原価率の基本的な考え方
- 施術メニュー別の材料費の具体的な目安と計算方法
- 利益率を高めるための実践的なコスト削減策
経営を改善したいオーナー・店長の方も、これから開業を考えている方も、ぜひ最後までお読みください。
目次
この記事を読んでいる方におすすめ
KUROCOの公式LINEにて美容サロン向けに、『事業の健全度を測るチェックリスト』を公開しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください!

美容室の売上原価・原価率とは?知っておくべき重要性
原価・原価率の基本的な考え方
原価率とは、売上高に占める材料費(売上原価)の割合を指します。
たとえば、カットとカラーで8,000円の売上に対して、使用した材料費の合計が800円だったとすると、原価率は10%になります。
同じ売上高でも、原価率を下げれば手元に残る利益は増えます。逆に原価率が高いままでは、どれだけ予約を詰め込んでも利益が出にくい体質になってしまいます。
原価をコントロールすることは、売上を増やすのと同様に、利益を増やすための重要な手段です。
変動費と固定費の違い
美容室の経費は、大きく「変動費」と「固定費」の2つに分けられます。
変動費とは、売上の増減に連動して変わる費用です。シャンプーやカラー剤など、施術ごとに消費される材料費が代表例です。施術数が多いほど材料費は増えるため、変動費とも呼ばれます。
固定費は、売上に関係なく毎月一定額発生する費用です。家賃・人件費・リース料などが該当します。
経営改善を進めるには、まずこの2つの費用の構造を正しく理解することが出発点になります。
美容室の売上原価の内訳と理想の原価率の目安
施術にかかる主な売上原価の内訳
施術1回あたりにかかる材料費(売上原価)の目安は、以下のとおりです。なお、使用する商材や仕入れ先によって金額は異なります。
| 材料 | 1回あたりの目安 |
| シャンプー・コンディショナー | 約60円 |
| カラー剤 | 300〜800円 |
| パーマ剤 | 600〜700円 |
| トリートメント | 約200円 |
| 消耗品(ラップ・耳キャップなど) | 50〜100円 |
カラーやパーマでは、ラップ・耳キャップ・グローブなどの消耗品もすべて原価に含まれます。これらは1点あたりの金額が小さくても、積み重なると無視できないコストになるため、見落とさないようにしましょう。
理想の原価率は「10%以下」
サロン経営の現場では、材料費の原価率は10〜15%が一つの目安として語られることが多くあります。
ただし、人件費や家賃などの固定費を差し引くと、原価率が15%を超えると経営が厳しくなります。
余裕のある利益を確保するためには、原価率を10%以下(できれば8%前後)に抑えることを目標にするのが望ましいといわれています。
原価率が10%を超えている場合は、材料費の見直しや薬剤の使用量管理など、具体的な改善施策が必要です。
美容室の原価率・利益率の計算方法をわかりやすく解説
原価率の基本的な計算式
原価率の計算式はシンプルです。
原価率(%)= 売上原価 ÷ 売上高 × 100
計算例:
- メニュー: カット+カラー(売上: 8,000円)
- 使用材料費: カラー剤600円 + シャンプー60円 + 消耗品80円 = 740円
- 原価率: 740 ÷ 8,000 × 100 = 9.25%
また、店販商品(シャンプー・トリートメントなど)を販売する場合も同様に計算できます。仕入れ値が2,000円の商品を4,000円で販売すれば、原価率は50%です。店販は施術より原価率が高くなりやすいため、利益率の高い商品の選定が重要になります。
【メニュー別】原価率の計算シミュレーション
実際のメニューで原価率を確認してみましょう。
| メニュー | 料金 | 材料費目安 | 原価率 |
| カットのみ | 4,000円 | 100円 | 2.5% |
| カット+カラー | 10,000円 | 900円 | 9.0% |
| カット+パーマ | 12,000円 | 1,100円 | 9.2% |
| トリートメント+シャンプー | 3,000円 | 260円 | 8.7% |
カットのみは材料費が少なく原価率が低い一方、カラーやパーマは薬剤コストがかかるため原価率が上がります。
原価率が高いメニューほど、薬剤の使用量管理と適正価格設定が重要になります。
粗利益率・営業利益率・経常利益率の考え方
経営状況を正確に把握するには、3つの利益率を使い分けることが大切です。
粗利益率(売上総利益率)
粗利益率 = (売上高 − 売上原価)÷ 売上高 × 100
材料費を差し引いたあとの利益率。原価率が10%前後であれば、粗利益率はおおむね85〜90%前後になります。
営業利益率
営業利益率 = (粗利益 − 販売管理費)÷ 売上高 × 100
人件費・家賃・広告費などの固定費も差し引いた利益率。美容室では5〜15%程度が目安の範囲として挙げられます。
経常利益率
経常利益率 = (営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用)÷ 売上高 × 100
借入金の利息なども含めた最終的な利益率です。
この3段階で数字を追うことで、「どこでコストが膨らんでいるか」が可視化されます。
美容室経営における原価以外の主な経費(固定費)

家賃・水道光熱費
家賃は、美容室経営における大きな固定費の一つです。サロン経営の現場では、売上の10〜15%以内に抑えることが目安として語られることが多くあります。
駅前や商業地など立地が良い物件は集客力が高い反面、家賃が売上を圧迫しやすくなります。物件を選ぶ際は、見込み売上に対して家賃が適正かどうかを事業計画で検証することが大切です。
水道光熱費は売上の10%程度が目安として挙げられます。シャワーやパーマ機器など、水道・電気の使用量が多い美容室では特に注意が必要です。
人件費
人件費は、美容室の経費の中で最も大きな割合を占めます。一般的には売上の40〜50%が目安として挙げられることが多く、規模や業態によって前後します。
スタッフの給与・社会保険料・研修費などが含まれます。
利益改善を目的に安易に人件費を削ると、スタッフのモチベーション低下や離職率上昇につながります。人件費は「コスト」ではなく「投資」という視点で考え、適正水準を保ちながら生産性向上で補うことが重要です。
広告宣伝費・通信費
新規集客や予約管理のためのコストも欠かせません。
広告宣伝費(ホットペッパービューティー掲載費・SNS広告など)は、売上の5〜15%程度が目安の範囲として語られます。集客施策の効果を定期的に検証しながら、費用対効果を見直すことが大切です。
通信費・システム手数料(ネット予約・POSシステム・LINE公式アカウントなど)は、導入するサービスの内容によって大きく異なります。まずは自店で使っているシステムの月額費用を合計し、売上に対する比率を把握することから始めましょう。
利益率アップ!美容室の原価率・経費を抑える効果的な方法
材料の仕入れ先と方法を見直す
材料費の削減で最初に取り組みたいのが、仕入れ先の見直しです。
複数の業者から見積もりを取り、比較することで交渉力が生まれます。ネット通販を活用すると、問屋経由より安く仕入れられるケースも少なくありません。
長年取引している業者と信頼関係が築けている場合は、まとめ買いや年間契約を条件に値下げ交渉するのも有効な手段です。
薬剤の使用量を記録・適正にコントロールする
カラー剤やパーマ剤の使いすぎは、原価率を押し上げる大きな要因の一つです。
カルテにお客様ごとの薬剤使用量を記録し、スタッフ全員で共有することで、過剰な使用を防げます。
「なんとなく多め」「以前より毛量が増えた気がする」といったあいまいな判断をなくし、データをもとに適正量を管理する習慣が、材料費の削減につながります。
こまめな棚卸しで在庫の無駄をなくす
使い切れない店販商品や発注し忘れによる機会損失は、利益を知らぬ間に削っています。
週2回程度の棚卸しを習慣にすることで、在庫の実態をリアルタイムに把握できます。
「いつの間にか賞味期限が切れていた」「売れ筋商品が欠品していた」といったロスを防ぐことが、コスト管理の基本です。
ペーパーレス化やシステムの導入で業務効率化
紙のカルテやスタンプカードをデジタル化することで、印刷・消耗品費の削減と業務効率化を同時に図ることができます。
LINE公式アカウントを活用したリピート促進や、予約システム・POSレジとの連携により、スタッフの作業時間を短縮しつつ機会損失も防げます。
初期費用がかかるシステムも多いですが、長期的に見れば人件費削減や集客効率化でコストを回収できるケースが多いため、費用対効果を試算したうえで検討することをおすすめします。
原価率を「下げる」より「稼ぐ力を上げる」——客単価アップの3つの戦略

コスト削減は利益改善の基本ですが、削れる経費には限界があります。もう一つの柱は、客単価を上げることで売上そのものを底上げすることです。
客単価が上がれば、材料費の絶対額が多少増えても、売上に占める割合(原価率)は下がります。つまり、経費を抑えながら原価率も同時に改善できるのです。
客単価を高める方法は大きく3つあります。
(1)アップセル:より上位のメニューやオプションを選んでもらう
アップセルとは、お客様が検討しているメニューよりも上位のメニューやオプションを提案し、一度の来店でより高い満足と売上を実現することです。
たとえば、カラーのみを検討しているお客様に「今日はトリートメントも合わせてはいかがですか? カラーの持ちがかなり変わりますよ」と一言添えるだけで、購入を検討してもらえるケースがあります。ポイントは、売り込みではなくお客様のメリットを起点に提案すること。「ツヤが出る」「色持ちが良くなる」といった具体的な変化を伝えることで、自然な流れで上位メニューへ誘導できます。
アップセルは1人のお客様への提案で完結するため、集客コストをかけずに客単価を上げられる効率的な手段です。
(2)クロスセル:施術以外の商品・サービスも購入してもらう
クロスセルとは、施術とあわせて店販商品やホームケアアイテムの購入を促すことです。
最も自然な形は「施術で実際に使った商品をそのまま紹介する」方法です。「今日使ったシャンプーはこちらなんですが、ご自宅でも使うと仕上がりが持続しますよ」と伝えることで、お客様はリアルな体験をもとに購入判断ができます。
また、シーズンに合わせたホームケアセットの提案や、次回来店までのケアとして補修トリートメントを案内するなど、来店と来店の間をつなぐ提案も効果的です。
店販はサービス業の中でも比較的利益率を確保しやすい販売形態です。在庫管理の手間はかかりますが、客単価アップと顧客満足度向上を同時に実現できる点で、積極的に取り組む価値があります。
(3)ターゲット・コンセプト設計で施術料金自体を底上げする
アップセルやクロスセルは既存の価格帯を前提にした施策ですが、そもそもの施術料金の水準を引き上げることも、根本的な原価率改善につながります。
たとえば、同じカラーリングでも、一般的なサロンが10,000円で提供しているメニューを、個室での完全プライベート施術・カウンセリング込みで15,000円に設定することは珍しくありません。価格を上げるためには、それに見合った独自の付加価値を設計することが前提になります。
具体的な方向性としては、以下のようなものが挙げられます。
- 富裕層・こだわり層にターゲットを絞る: 価格感度が低く、体験の質を重視するお客様を主要ターゲットに設定する
- 完全予約制・完全個室化: 待ち時間ゼロ・プライバシー保護を強みにすることで、ゆったりした体験に対して対価を得やすくなる
- 専門特化でポジションを確立する: 「くせ毛専門」「白髪ぼかし専門」など特定の悩みに特化することで、価格競争から抜け出し指名率を高める
- カウンセリングやアフターフォローを充実させる: 施術後のケア指導や定期連絡など、「来店以外の接点」を増やすことで価値を高める
重要なのは、値上げそのものが目的ではなく、「この金額を払う価値がある」とお客様が感じるサービスを設計することです。コンセプトとターゲットを明確にすることで、価格帯を変えても選ばれるサロンになることができます。
【まとめ】シミュレーションと目標設定で無駄のない経営を
損益分岐点を把握して改善を続けよう
この記事のポイントをまとめます。
- 美容室の原価率の目安は10〜15%、理想は10%以下(8%前後)
- 売上原価の主な内訳は、カラー剤(300〜800円)・パーマ剤(600〜700円)・シャンプー(約60円)など(商材・仕入れ先により異なる)
- 原価率の計算式は「売上原価 ÷ 売上高 × 100」
- 固定費(家賃・人件費・広告費)の目安も把握したうえで、総合的に利益率を管理する
- 仕入れ先の見直し・薬剤管理・棚卸し・システム化はコストを抑える基本施策
- 客単価アップ(アップセル・クロスセル・コンセプト設計)は、削減だけに頼らない利益改善の柱
コスト削減と客単価アップは、どちらか一方ではなく両輪で進めることが健全な経営への近道です。
数字の目安はあくまでも目安です。大切なのは、自店の固定費・変動費から損益分岐点を把握し、「何件の施術で黒字になるか」「どのメニューが最も利益率が高いか」を自分で計算できるようになることです。
まずは今月の材料費と売上高から、自店の原価率を計算することからはじめてみましょう。
KUROCOでは、美容サロン向けに、データを活用した実践的な支援を行っています。
また、公式LINEでは、美容サロン経営者の方に向けて、採用・マネジメントや集客・マーケティングに関する情報をお届けしています。
現場で活かしやすいよう実践しやすい形に整理しており、事業健全度診断や動画コンテンツもご覧いただけます。
採用や集客、組織づくりに課題を感じている方は、必要な情報を得る場として公式LINEをご活用ください。
美容サロン業界をアップデートするラジオ番組
#サロプロ
毎週金曜日 23:00〜23:55
全国約120局のコミュニティFM局へ配信
▼詳細はこちら


慶応義塾大学理工学部卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。主に中堅規模(数百億)以上の企業をメインクライアントとしたプロジェクトに従事。化粧品メーカや卸・リテール業界など、幅広い業種において、中期経営計画策定やマーケティング戦略の構築、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンス等の実績を有する。独立後も製造業や小売業、サービス業に至るまで大小様々な企業の課題発見に従事、成果を上げる。特にデータ分析においては、複数のコンサルファームにもアサインされる実力を有する。コンサルティングに加え、ヘアサロン2店舗と、まつげ・眉毛専門のアイサロン1店舗の運営、ならびに伝統工芸品の販売事業にも携わり、現場視点での売上づくりにも取り組んでいる。その他、AI関連スタートアップや教育関連企業からもデータ分析支援の依頼を数多く受けている。2013年9月にクロスメディア・パブリッシングより「問題解決のためのデータ分析」を出版(2019年2月に新装版を出版)。教育プラットフォームUdemyで展開しているオンライン講座(「ビジネスの現場で使えるデータ分析」、他)の受講者数は4万人(2024年2月現在)を超える。2020年10月KUROCO株式会社を設立、現在に至る。
東亜大学芸術学部トータルビューティ学科非常勤講師。
\ この記事を読んでいる方におすすめ! /
KUROCOの公式LINEにて美容サロン向けに、『事業の健全度を測るチェックリスト』を公開しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください!










