課題に合わせたデータ分析のやり方
データ分析を正しく進めるためには、課題に合わせた分析を方法を見極めることが重要です。具体的には、現在自社が持っているデータのほか、あらゆるデータの中から、どのデータを使って分析を行うべきなのかを検討していくということです。
分析方法の決め方は、課題や出てきた仮説によってやり方が大きく変わってきますが、具体的な事例をもとに分析方法の考え方を見ていきましょう。
目次
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課題に合った分析方法を見極める
BtoC事業を行なっている企業の事例をもとに、課題に合った分析方法の見極め方を解説します。
Case Study
来年度に向けた商品戦略立案を任された場合、戦略を構築していくにあたって、どのようなデータを抽出すればよいでしょうか?
まずは、それぞれの商品がどれだけ販売されたのかを分析するために、年度別の商品別売上データ〈図表1〉を引っ張ってくることが多いでしょう。
図表1 商品別売上データ(年度別)
あるいは、シーズンごとに売れる商品が異なるようなビジネスであれば、日別の売上を記録したデータ〈図表2〉を抽出するか、あるいは月ごとや週ごとのデータを集めます。
図表2 商品別売上元データ❶ (日別)
商品軸でデータを深掘りする
さて、図表1の商品別売上データを、2018年度における売上降順に並べ替えて分析すると、商品別ABC分析の表やグラフ〈図表3・図表4〉ができます。
図表3 商品別ABC 分析(表)
図表4 商品別ABC 分析(グラフ)
「ABC分析」とは、重要度が高く、重点的に管理すべき対象を明らかにするために、A・B・Cという3つのランクに分ける方法で、それぞれのランクに応じて管理方法を選択します。
たとえば、販売管理を行う場合、商品や得意先などに応じてABC分析を行い、販売方法や販促頻度、あるいは売場構成比などを変えていくといった施策を打つ際に使います。
ただし、Aランクだけを重視するというわけではなく、各ランクそれぞれで管理方法を考えることが大切です。
一般的には、Aランクが累積売上構成比70%~80%まで、Bランクが累積売上構成比70%(あるいは80%)~90%まで、そしてCランクが累積売上構成比90%~100%です。
図表3・図表4の場合、2018年度の商品売上高でABC分析を行っていますが、上位5商品で売上全体の80%近くを占めていることがわかります。
顧客軸でデータを深掘りする
上記のようにABC分析を行うと、商品の優劣がはっきりするので、どれをテコ入れして販売していくのかはわかるようになりました。しかし、これで本当によいのでしょうか?
戦略とは「誰に、何を、どのように展開していくのか」です。
先ほどの分析では、商品ごとの優劣が明確になるため、「何を」展開していくのかはわかるものの、「誰に」がわからないため、具体的な打ち手まで落とし込むことができません。
結局「昨年と同様、○○商品を中心に販売していこう」で終わってしまい、売上改善にはつながりづらいでしょう。
そこで、商品×顧客別売上データ〈図表5〉を抽出します。日別の商品別売上元データ❶〈図表2〉と異なるのは、それぞれの商品を誰が購入したのかという「顧客情報」も含めているところです。
「誰が」購入しているのか、顧客の顔が見えれば、次の打ち手を構築することができます。
図表5 商品×顧客別売上データ
この図表5のようなデータを取得することによって、図表6のような分析が可能となります。具体的には、顧客情報が入ることによって、年代別で商品の購入状況が明確にわかるようになるのです。
図表6 商品別ABC 表(顧客年代別)
図表3のような商品別ABC分析までの段階では、単にどの商品を強化するかといった漠然とした打ち手しか考えられず、しかもそれが正しいのかどうかの判断も困難です。
しかし、この図表6のように顧客の顔まで見えるようになることによって、より細かな分析結果を出すことができ、それによって打ち手も明確になっていきます。
たとえば、売上が伸びてきている商品Dについては、構成比の高い30代女性に対してまずはアプローチをかけていくことがベターになります。
データ同士の紐づけ
よく問題になるのが、図表5のような商品×顧客別売上データがなかなか取れないということです。これは、商品別の売上データと顧客データベースが別々のファイルで保有されている場合が多いからです。
図表5のような理想的なデータは、いくつかのデータを紐づけることで完成させていきましょう。図表7は、商品別売上元データ❶(日別)〈図表5〉に顧客IDを組み合わせたものです。これと、顧客データベース〈図表8〉を紐づけします。
図表7 商品別売上元データ❷ (日別)
図表8 顧客データベース
図表7にある顧客IDに基づき、図表8から同じIDの顧客情報を、エクセルの「VLOOKUP」という関数を使い、紐づけていきます。
このように、手持ちのデータ同士を紐づけることで、分析に適した理想的なデータを完成させることができます。
こうした売上データと顧客データベースの紐づけを行うにあたっての条件として、顧客登録(会員カードやインターネット販売での会員登録)を行っていることが前提となってきます。
インターネット販売はもちろん、最近では店舗においても、比較的簡単に顧客情報を取れる仕組みをつくれます。もしまだ顧客データベースをお持ちでない場合は、企業にとって最大の資産になり得る情報ですので、ぜひ顧客登録をして顧客データベースをつくり上げる仕組みを構築してください。
市場データの活用事例
ここまでは社内のデータをもとに必要な分析方法を見極めていきましたが、最後に、市場データを活用する事例についてもご紹介します。
Case Study
年々売上が減少する靴(履物)の卸A社。いかにして売上を増加させていくのかという課題を抱えています。外部データを活用して分析してみましょう。
国内履物類業界の売上推移〈図表9〉を見ると、自社より競合他社や市場全体の減少率のほうが高いため、自社商品が他社と比較して競争力がなくなっているわけではないようです。
図表9 国内履物類業界の売上推移
履物類市場全体の規模も縮小し、人口も減少傾向ですから、従来通りの頑張りの範囲内では、なかなか売上を上げることは難しいと想定できます。むしろ、A社は頑張っているほうだとも捉えられるのではないでしょうか。したがって、既存の商品群のみで、従来の事業のやり方での売上増加は難しいと判断できるでしょう。
もし、図表9のような競合他社や市場全体のデータがなかったとしたらどうでしょうか。自社内にある数値データだけでは、単に「自社の売上が年々下がっている」という事実しかわからないということになります。
この場合、A社内では、
「商品が悪い」
「営業がよくない」
「もっとプロモーションすべきだ」
など、各担当者が自らの責任を回避するような意見しか出ない可能性が高くなります。
このように、外部データを取得して、社内データと突き合わせをしながら分析することで、問題を明確にしていくことが可能となるのです。
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