顧客分析とは?6つの手法や分析事例、分析に役立つツールについても解説
目次
この記事を読んだ人がよくダウンロードしている資料
顧客分析とは
顧客分析とは、売上や利益を伸ばすために顧客の購買傾向や顧客数の変化などを分析することです。
顧客分析が必要な理由
どのビジネスにおいても商品なりサービスを買ってくれている「顧客」がいるからこそ成り立っています。
この顧客を分析することで、新規顧客を増やしていくためのキーとなるポイントや、顧客ロイヤリティを高める(ヘビー顧客としていく)ためのポイントが把握されます。それらの分析結果をもとにマーケティング戦略を立てることで効率的に売上・利益を伸ばすことができます。
顧客分析の6つの手法
ビジネスにおいてよく用いられる顧客分析の手法には次のようなものがあります。
- RFM分析
- CPM分析
- CTB分析
- デシル分析
- セグメンテーション分析
- 行動トレンド分析
RFM分析
RFM分析(Recency frequency monetary analysis)とは顧客分析手法の1つで、「一番最近に購入した顧客は誰か」「頻繁に購入する顧客は誰か」「一番お金を使ってくれている顧客は誰か」という3つの側面から顧客をランク付けする分析手法です。
例えば毎月のように買っていただいているお客様と、年に1回しか買わないお客様、ここ1年まったく買っていないお客様とでは、その商品に対する気持ちが異なります。
買い方の異なるお客様に対して同じアプローチをしていても、十分な効果を得られません。それぞれのお客様の気持ちに応えた営業が理想的です。
お客様の購入状況に応じた打ち手を考えるために活用するのが、RFM分析です。
RFM分析を行うには、データベースに購買履歴が記録されていることが前提となります。購買状況を時系列で追えないような顧客管理の方法の場合、RFM分析はできません。直接お客様へ販売していて、かつ会員登録も行なっている企業だけができる分析法といえます。
CPM分析
CPM分析とは、Customer Portfolio Managementの略で「購入回数」「購入金額」「最終購入日からの経過日数」によって顧客を分類し、顧客の傾向を分析する手法です。主に、購入回数が少ない顧客をリピーターに育てていくために活用されます。
一般的にECサイトの売上の8割はリピーターによって生み出されているため、ECサイトの売上を伸ばすうえでCPM分析はとても効果的な手法です。
前述のRFM分析は主に、最近商品を購入した顧客や購入頻度が高い顧客にターゲットを絞って、短期的に売上を伸ばしたい場合に活用されることが多いです。その一方、CPM分析は顧客全体を分析して、購入頻度や顧客単価を高め、中長期的に安定して売上を伸ばしていく場合に活用されます。
参考:CPM分析とは?顧客分析でECサイトや店舗のリピート率を高める!
CTB分析
CTB分析とは、Category Taste Brandの略で「カテゴリー」「色や模様、サイズなどのテイスト」「商品のブランドや使用されているキャラクター」の視点から顧客を分類、分析する手法です。
購入している商品の傾向から顧客を分類することで、購買傾向が似ている顧客に対して効率的なマーケティングを実現することができます。
デシル分析
デシルとはラテン語で”10等分”という意味で、名前の通り顧客全体を10等分して分析する手法です。
10等分する際に用いられる指標は購入金額であることが多く、顧客を購入金額の順に並べ、そのグループを10等分しグループごとの傾向を分析します。
デシル分析はRFM分析やCPM分析、CTB分析と比べて分類の方法が簡単なためエクセルのソート機能などを使って簡単に行うことができます。
ただし分類が単純であるがゆえに各グループの顧客どおしに似た傾向がない可能性も高いです。売上に大きく貢献している顧客とそうでない顧客の分類には効果的ですが、より細かい分析には向いていないため取り組む際には注意しておきましょう。
セグメンテーション分析
セグメンテーションとは、対象を傾向の似ているグループに分類することです。広い意味ではRFM分析やCPM分析、CTB分析、デシル分析もセグメンテーション分析の一種と捉えることができます。
セグメンテーション分析では前述の4つの分析のように分類の指標が決まっておらず、分析の目的に合わせて様々な指標でグループ分けを行います。
一般的にセグメンテーションで用いられる指標には以下のようなものがあります。
- 地理的変数
- 都道府県
- 人口密度
- 交通手段
- 地域の文化 など
- 人口動態変数
- 年齢
- 性別
- 職業
- 年収 など
- 心理的変数
- 価値観
- 性格
- ライフスタイル など
- 行動変数
- 購入金額
- 購入回数
- 購入した商品/サービスの種類 など
行動トレンド分析
行動トレンド分析とは、1年を通しての顧客の購買傾向の変化を分析する手法です。商品やサービスの特性によって、1年の中でよく売れる時期とそうでない時期が生まれることは多いです。その傾向を分析することで、無駄な在庫を減らしたり、売り逃がしを無くしたりすることで利益や売上を伸ばすことにつなげることができます。
顧客分析の事例
ここからは、弊社クライアントのアパレル企業の事例をもとに、より実践的な顧客分析の取り組み方を解説します。
売上を顧客視点で分解する
カード会員など、顧客情報を取っている企業であれば、販売ローデータにも顧客IDが紐づいています。そうすることで、会員と非会員の売れ方の違いを把握することができます。
図表1は3年間における会員と非会員の客数や来店頻度、購買点数などの推移を示したものになります。
図表1
こうすることで、各年においてどんな顧客層が増減しているのか分かるため、力を入れるべき層と打ち手の内容が定まってきます。
ちなみに、顧客の囲い込み施策として、ポイントカードを作っている企業は多いと思いますが、LINE@やメールアドレスを登録するなどオンラインでのアプローチができる方法での会員化をしていきましょう。
一度店舗で購入してくれたお客様が、次いつ来てくれるか分かりません。電話番号や住所だけですと、アプローチするのにもコストや手間がかかりますが、LINEやメールですとコストも手間も大きく省くことができます。また、店舗だけでなくネットショップへの誘導にも活用できます。
今では当たり前になっているオムニチャネル戦略を実行する上でも、店舗にて購入経験のある顧客をデジタル上でもコミュニケーション取れるような会員化の仕組みは重要です。
スマホアプリを作ることで、プッシュ通知などで追いかけたりオフライン(店舗)とオンラインの顧客データの統合も検討してみましょう。
会員分析で新規とリピーターの傾向を確認する
図表2,3は、会員の登録年別の客数推移になります。
図表2 会員の登録年度別の客数推移
図表3 会員の登録年度別の客数推移(構成比)
このグラフは、会員を登録した年度別に分解して、客数(ユニークユーザー数)の推移を表したものになります。
こちらを見ると、一目瞭然で、毎年会員の半数以上を新規会員として獲得できている一方、その8割以上は翌年度には購入しなくなっていることが分かります。
新規顧客はしっかりと獲得できている一方で、その顧客をファンにするまでの育成が全くできていない、というのがこの企業の顧客に対する最も大きな問題となります。
もともとは新規の顧客をどう増やしていくのかの施策が中心でしたが、この分析結果を踏まえ、いかに一度接点を持ったお客様をファンにしていくのかという戦略・施策に舵を切り替えました。
顧客プロフィール込みでの会員データを取得していると、上記のような新規会員登録日を起点とした分析以外にも、エリア別や性別、年齢別などの分析も可能となります。
また、先ほどお伝えしたように、アプリやWeb等によるデジタルでのコミュニケーションを可能としていた場合、定期的にアンケートを取ることで、来店方法や知ったきっかけ、普段使っているブランドや読んでいる雑誌等、自社の顧客のデモグラフィック情報だけでなくライフスタイルも把握していくことで、より詳細な分析も可能となります。
このように、マーケティングも含めた会員施策を実行していくことも必要でしょう。
RFM分析で打ち手を明確にする
顧客視点でのデータ分析において、必ず行うのがRFM分析になります。
前述の通り、お客様の購入状況に応じた打ち手を考えるには、RFM(Recency frequency monetary analysys )分析という「よい顧客を見分ける」方法が便利です。
誰が一番最近購入した顧客か、頻繁に購入する顧客は誰か、一番お金を使ってくれている顧客は誰か、という3つの側面から分析します。
RFM分析を行うには、データベースに購買履歴が記録されていることが前提となりますので、会員情報を取っている企業であれば行えます。
細かい説明は省きますが、RFMのRはRecency(リセンシー)で、「最新購買日」になります。ある顧客が最後に商品を購入した日を判断材料とするもので、最近購入した顧客のほうが、何年も前に購入した顧客よりよい顧客と考えるものです。
FはFrequency(フリークエンシー)です。「購買頻度」になります。フリークエンシーは、顧客がどの程度頻繁に購入してくれたかを判断材料とするもので、頻度が高いほどよい顧客と考えます。
MはMonetary(マネタリー)です。「購買金額」になります。
マネタリーは、顧客の購買金額の合計で、一般的にこの金額が大きいほどよい顧客と考えることができます。
RFMそれぞれの指標の見方は以下のようになります。
① Rが高いほど将来の企業収益に貢献してくれる可能性が高い
② Rが低ければFやMが高くても他社に奪われている可能性が高い
③ Rが同じならFが高いほど常連顧客
④ Rが同じならFやMが高いほど購買力がある顧客
⑤ RやFが高くてもMが少ない顧客は購買力が低い
⑥ Fが低くMが高い顧客はRの高いほうがよい顧客
⑦ Fが上がらないか下がっている顧客は他社に奪われている可能性が高い
このRFMでは、その名前の通りの順番で優先順位が高くなります。
重要なのは活用の仕方になります。
自社なりにRFMそれぞれにランクを付けていきます。大体5段階評価をすることが多いです。
例えば、Rであれば、1ヶ月以内の購入者は「5」、1〜3ヶ月の間であれば「4」というようにランクを付けていきます。同じようにFとMも付けます。
最終的にそれぞれ3つを組み合わせ、「555」となった顧客が最もロイヤリティの高い顧客になり、「111」がその反対で一元客あるいは休眠となってしまっている顧客となります。
そしてそれぞれのランクに応じて施策を変えていくのですが、「111」~「555」それぞれで分けてしまうと125通りにもなってしまうので、ある程度の塊にマージして、それぞれのセグメントで施策を打っていきます。
例えば、図表4はある小売業の企業においてRFMのうち、RFを使って顧客ランクを作ったものになります。
図表4 RFM分析例
顧客リストに対して一斉にDMを送る、という施策を打つ企業を今でもよく見ますが、図表4を見ると、異なるランクの顧客に対して同じ施策をしてもあまり効果がない(正確に言えば一部の顧客にした効果が出ない)ということが分かるでしょう。
Eランクの休眠している顧客に対しては、割引クーポンなどの再度来店してもらうような施策が必要な一方、Aランクの上得意客に対しては密なコミュニケーションや特別なイベントへの招待などが必要な施策でしょう。
このように、顧客ランクに応じてエンゲージメントの高め方が異なるので、RFM分析をした上で施策をすることはとても有効なのです。
顧客分析に役立つツール
最後に顧客分析を効率的に進める際に役立つツールについて解説します。
CRM/SFA
CRMとは「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」の略で、顧客の情報を管理するシステムのことです、SFAは「セールス・フォース・オートメーション」の略で営業活動を支援するシステムのことです。いずれも、顧客情報を入力しておくことで前述のKPIの達成率を手軽に把握したり、顧客との取引状況を共有するなどの機能を持っています。
CRMとSFAはもともと別のシステムとして様々な企業から提供されていますが、近年はその機能に大きな違いはなくなっており、概ね同じシステムだと考えても差し支えはなくなってきています。
CRM/SFAはツール内で、今回ご紹介したような分析ができるものもあれば、可視化ツールと連携することで細かい分析ができるものもあります。
顧客データの分析を強化するためには、自社にとって必要な機能を持ったツールを探して導入を検討するのもおすすめです。
MA
MAとは「マーケティングオートメーション」の略で、マーケティング活動の自動化システムのことです。MAはメールアプローチやアプローチするべき顧客の選定などを自動化することを目的としたツールです。
MAの最終的な目標はマーケティング活動の自動化ですが、それを実現するために顧客一人ひとりの行動データを細かく分析することができる機能がついています。
たとえば、特定のユーザーがどのページを訪問したか、訪問したページにどれくらいの時間滞在したかなどの分析も可能です。
CRA/SFAとの連携が可能なものや、CRA/SFA機能を持ったものなどもあるため、導入を検討する際には自社ですでに導入しているツールとの相性もチェックしましょう。
エクセル
事業規模などにもよりますが、データ量が多くない場合にはエクセルを使った売上分析でも十分な成果を得ることができます。
データを分析、活用していこうと考えると上記のようなツールの導入を考えてしまいがちですが、ビジネスに必要なデータ分析の多くはエクセルで取り組めることも多いです。データを活用する体制が整うまではまずエクセルによるデータ分析から取り組むこともぜひ検討してみてください。
分析ツールやピボットテーブルといった機能を使ったデータ分析はこのブログでも解説しています。また、エクセルを使った分析手法の解説書なども多くあるため、これからデータ分析に取り組んでみようろ考えている方は一度チェックしてみるのもおすすめです。
当ブログではこの他にも様々な視点からのデータ分析が学べる記事を公開しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
\ この記事を読んでいる人におすすめ! /