データマネジメントとは 必要なスキルやツール、効率的な進め方を解説
目次
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データマネジメントとは
データマネジメントとは、データの収集、整理、保持、活用が適切に行われるように管理し、ビジネスにおけるデータの価値を高めることです。
データを適切に管理するためには、そもそもどのようにデータを活用するのかといった戦略の立案や、管理システムの設計、構築、データに関するセキュリティの強化など幅広い取り組みが必要となってきます。それらの取り組みを通してデータを適切に管理することで、データ活用の効果を最大化することを目指すのがデータマネジメントです。
データを適切に管理するという考え方は取り扱うデータの量の大小に関わらず重要ですが、特にデータの量が膨大で、データを管理するための専用のシステムが必要となるような場合に用いられることが多いです。そのためこの記事では、データを適切に管理するための基本的な考え方から、大量のデータを管理するための技術面に関わる知識を中心に解説します。
データマネジメントの重要性
企業がデータマネジメントに取り組むことことは、
- 意思決定の速度と精度の向上
- 管理コストの削減
- リスク管理の強化
といった効果につながります。
意思決定の速度と精度の向上
データマネジメントを適切に行うことで、正確なデータに基づく意思決定が可能になります。多くのデータを自動で素早く処理できるようなシステムを構築することができれば、経営戦略や戦術の立案や実施において、より合理的な判断を迅速に行うことができます。
管理コストの削減
企業では部門ごとに異なるシステムが導入され、データの管理方法もバラバラなケースが多いです。これらを統合し、一元的に管理することで、データの重複や矛盾を無くし、それらを修正するための手間やコストを削減することができます。また、収集、保持するデータの量、場合によっては無駄なシステム自体を減らせる場合もあるため、システムの維持にかかるコストの削減にもつながります。
リスク管理の強化
データマネジメントを適切に行うことで、情報漏洩やデータの不正利用といったリスクを減らすことができます。適切なリスク管理は企業の信頼度にもつながります。また、データに関する法的な規則を順守し、データを適切に管理することで、法律的なトラブルを避けることもできます。
データマネジメントに必要な11の知識とスキル
国際データマネジメント協会が制作したデータマネジメントの専門書「データマネジメント知識体系ガイド(DMBOK)」では、データマネジメントに必要な知識を以下の11の領域に分類しています。
- データガバナンス
- データアーキテクチャ
- データ品質
- データセキュリティ
- データ統合と相互運用性
- マスタデータ管理
- ドキュメントとコンテンツ管理
- データモデリングとデザイン
- メタデータ管理
- データストレージとオペレーション
- データウェアハウスとビジネスインテリジェンス
データマネジメントに取り組む上で重要なキーワードとなっているため、それぞれの意味や、それに関わるスキルについて確認してみましょう。
データガバナンス
データガバナンスとは、データを適切に管理するため方針やルールのことです。
データマネジメントを適切に進めるためには、データを活用してどのような成果を得たいのかといった目的を明確にすることが欠かせません。データ活用の目的を踏まえて、どのようにデータマネジメントに取り組むべきなのかを検討することで、適切なデータマネジメントの方針を立てることができます。加えて、データの正確性や信頼性、セキュリティなどを確保するためのルールやポリシーを定めることもデータマネジメントにおける重要な取り組みです。
これらの方針やルールをまとめてデータガバナンスと呼びます。
データガバナンスを策定するためには、データ分析やデータの活用方法に関するスキル、そしてビジネスに対する知識や戦略立案能力も必要となります。
データアーキテクチャ
データアーキテクチャとは、データの収集、整理、保持、活用という流れの全体設計のことです。
データの効率的な管理を実現するためには、どのようなデータを収集するべきなのか、どのようなツールが必要となるのかなどの設計が欠かせません。それらの仕組みを実現するための技術面の設計がデータアーキテクチャです。
データアーキテクチャの設計にはデータ分析に関するスキルに加えてシステム設計など、データエンジニアリングの知識も必要となってきます。
データ統合と相互運用性
データ統合とは、様々な部署やツールによって管理されているデータを一元的にまとめることです。データの収集、整理、保持、活用というステップの中の収集から整理にかけてのフローに当たります。
データを統合し、相互に連携して利用できる状態を作ることでデータを効率よく管理、活用できるようになります。
データを統合し相互運用性を高めるためには、各種のツールやデータ、それらを収集するためのエンジニアリングスキルが必要となります。この「データ統合と相互運用性」以降のキーワードは、大量のデータを処理するために必要なシステム構築やプログラミング言語など、より専門的なスキルが求められる領域となります。
データモデリングとデザイン
データモデルとは、どんなデータがどこにあるのかを示す地図のことです。データモデリングとデザインとは、この地図を作ることで、データを整理しどこにどんなデータがあるか分かる状態を作ることです。
データの収集、整理、保持、活用というステップの中の整理から保持にかけての設計に当たります。
データストレージとオペレーション
データストレージとは、データを保持しておく装置のことで、オペレーションとはこのデータストレージを適切に運用していくことです。ストレージシステムが正常に作動しているか監視したり、問題があった場合に代替環境に切り替えるなどの対応を行います。
データの収集、整理、保持、活用というステップの中の収集から整理にかけての運用に当たります。
ちなみに、データストレージなどに保存されているデータのまとまりをデータベースと呼びます。データベースと言うとデータを保存しているシステムのことを思い浮かべがちですが、実際にはデータを保存している装置はデータストレージ、保存されているデータ全体がデータベースと呼ばれます。
メタデータ管理
メタデータとはデータを管理するためのデータのことです。収集するデータ同士の関係性やデータの役割などを記録したもののことで、どこにどのようなデータがあるのかを整理するデータモデリングにおいて欠かせないデータとなります。
データの収集、整理、保持、活用というステップの中のデータの整理に必要なデータとも言えます。
メタデータ管理とは、このメタデータの正確性や一貫性を確保して管理することです。
データウェアハウスとビジネスインテリジェンス
データウェアハウスとは、データの分析や活用に必要なデータを整形された状態で保持し提供する仕組みのことです。データモデリングによって整理された状態でデータが保存されているストレージがデータウェアハウスとも言えます。
ビジネスインテリジェンスとは、データを分析し、情報を提供することです。
データウェアハウス内に適切にデータが保持されていることで、迅速にビジネスインテリジェンスが提供できる、つまり迅速にデータを分析したり活用したりできるようになります。
データの収集、整理、保持、活用というステップの中の保持から活用にかけてのフローに当たります。
ここまでの「データの統合と相互運用性」から「データウェアハウスとビジネスインテリジェンス」までの知識領域をデータマネジメントのフローに当てはめると以下のようになります。
厳密にはそれぞれの知識が各ステップに横断的に関わっていることも多いためあくまでイメージですが、おおまかな分類としては上の図のようになっています。
ドキュメントとコンテンツ管理
ドキュメントとは主に組織内で作成される議事録や報告書、プレゼンテーションなどを指し、コンテンツとは主に画像、動画、音声、SNSへの投稿、Webページなどのデジタルコンテンツを指し、その種類は多岐に渡ります。これらは非構造化データと呼ばれるデータです。
構造化データとはCSVやエクセルなど、行、列の概念を持った形で保存されているデータです。一方非構造化データとは、行、列の形式で表現されない形式のデータのことを指します。非構造化データはその名の通り整理された構造がないため、データの処理や分析が難しい場合が多いです。一方で、人間の言葉や感情、画像や音声の特徴など、重要な情報を含んでいるため近年では画像処理や音声処理、自然言語処理などの技術を利用しビジネスへの活用が進められています。そのためデータマネジメントを行う際にも必要に応じてデータとして収集し活用する場面があります。
マスタデータ管理
マスタデータとは顧客データ、商品データなど、追加や変更される機会の少ない、基礎となるデータのことです。マスタデータには、顧客の名前や連絡先などが含まれます。データの分析や活用には、このマスタデータに、購買履歴やWebサイトへのアクセス履歴などのデータを紐づけて行うのが一般的です。
ちなみに、基礎となるデータをマスタデータと呼ぶのに対して、顧客の購買履歴や商品の販売実績などの、事業活動によって日々生成されるデータをトランザクションデータと呼びます。
マスタデータ管理とは、顧客データ、商品データなどのマスタデータを一元的に管理し、データの正確性や一貫性を確保するためのプロセスやツールのことを指します。異なる部署間やツール間のマスタデータの生合成を確保しデータの正確性や一貫性を高めることで、データ活用の精度を高めることにつながります。
「ドキュメントとコンテンツ管理」と「マスタデータ管理」はデータマネジメントにおいて管理するデータの種類に関するキーワードです。
データ品質
データ品質とは、データの正確性や完全性などの特性のことです。データの品質を測る際の主な指標には以下のようなものがあります。
- 正確性:データがビジネスの実態を正しく反映できているかどうか
- 完全性:必要なデータを網羅できているか
- 一貫性:異なる部署間や異なるツール間で、データの値が一致しているか
- 有効性:データの型や値は適切か
- 一意性:重複データは存在していないか
- 適時性:事象が発生してからデータが利用できるようになるまでの所用時間は適切か
- 妥当性:データの取得や計測方法などは適切か
- 整合性:データ間の関係性の定義は適切か
データマネジメントでは上記のような性質を高く保っている状態、つまりデータの品質が高い状態を目指します。データ品質の高いデータを活用していくことが、データ分析や分析に基づく意思決定の精度を高め、ビジネスでの成果を高めます。
データ品質の向上や維持は、データの収集から整理、保持、活用全体に関わります。
データセキュリティ
データセキュリティとは、不正アクセスや情報漏洩を防ぐための対策のことです。
システムのセキュリティ環境を正しく保つことができているかを監視したり、データを権限のあるユーザーだけがアクセスできるように保護したりするなどの対策が必要となります。
データセキュリティ対策に関しては管理システムに関連するようなエンジニアリングスキルに加えて、データに関する法令などへの知識も求められます。
データセキュリティの強化や維持もデータの品質と同じ、データの収集から整理、保持、活用全体に関わります。
以上の11の知識とスキルは、データマネジメントの重要な要素であり、組織がデータを効果的に活用していくうえで重要な取り組みとなります。組織のデータ活用戦略やデータマネジメント戦略を策定する際には、これらの視点について考慮して総合的に取り組むことが重要です。
データマネジメントの強化に役立つツール
データマネジメントの取り組みの範囲は幅広く、取り扱うデータの量も膨大な場合が多いです。そのためデータマネジメントを効率よく実施するためのサポートツールも様々なものが提供されています。ここからはデータマネジメントに活用される主なツールをご紹介します。
ETLツール(データ統合ツール)
ETLツールとは、データを収集し統合するためのツールで、「データ統合と相互連携性」を実現するために活用します。Extract(抽出、収集)、Transform(変換、加工)、Load(送信、格納)の頭文字を取ってETLツールと呼ばれています。
DWH(データウェアハウス)システム
データウェアハウスシステムとは、蓄積されたデータを分析、可視化するために整理された状態で保持するシステムのことです。事業活動によって生成されるデータのほとんどはそのままでは分析できる状態にはなっていないため、適切な形に整形、整理して保持する必要があります。データウェハウスによってデータを整形、整理して保持することで迅速なデータ活用につながります。
データカタログツール
データカタログツールとは、メタデータを管理するためのツールです。どこにどのようなデータがあるのか、データ同士にはどのような関係性があるのかを適切に管理することで、必要なデータを素早く見つけたり整理したりできるようになります。
BIツール
BIツールとはビジネスインテリジェンスツールの略で、主にデータを自動で 視覚化し、データ分析をサポートするツールです。データ活用に取り組む際には、このBIツールが注目されがちですが、実際にBIツールを活用するためには可視化の設計やそれに必要なデータの種類、収集方法などを整理する、データマネジメントが欠かせません。
データクオリティツール
データクオリティツールとは、データの品質を評価し、データの正確性や整合性を向上させるためのツールです。不適切なデータを自動で除去したり、データ品質の改善に向けたアクションプランの提案したりする機能を持ったものもあります。
データベースセキュリティツール
データベースセキュリティツールは、保存されているデータのセキュリティを確保するツールです。データベースへのアクセス制限やユーザーの管理、データの暗号化、アクセスログの記録など、セキュリティを確保するための機能が備わっています。
データマネジメントの進め方
データマネジメントの主な取り組みには以下のようなものがあります。基本的には上から順番に進めていくことで効率よくデータマネジメントに取り組むことができます。
- データ活用戦略の策定
- データを活用するためのシステムの構築、運用
- データ活用組織の構築
1. データ活用戦略の策定
データを適切に管理するために欠かせないのが、データ活用の目的の明確にすることです。
データ活用と言ってもその活用方法は様々です。データを可視化することでデータに基づく議論が行える環境を作りたい場合もあれば、データを広告配信システムに入力することで自動的に広告配信を最適化したいという場合など、様々な活用法が考えられます。自社の課題や目標に合わせてデータの活用方法を決めることで、必要なデータの種類や量、導入するべきシステムなどを決定することができるようになります。
課題や目標に合わせてデータの活用方法を明確にするのがデータ活用戦略の策定です。
2. データを活用するためのシステムの構築、運用
近年のビジネスにおけるデータ活用では、取り扱うデータの量が膨大となる場合が多いため、それらを自動で処理できるようなシステムが求められます。
日々発生するデータを自動で収集、整理、保持、可視化するシステムをデータ活用基盤、データ分析プラットフォームと言ったりします。手作業では整理しきれない量のデータをシステムによって自動で収集し活用できる状態を作ることで、迅速なデータ活用を実現することができます。
このシステムによってどのようなデータを収集し、どのような形で保持し、どのように可視化、活用していくのかを設計するためにも先ほどのデータ活用戦略の策定が重要となってきます。
3. データ活用組織の構築
組織全体でデータを活用していくためには、組織のメンバー一人一人がデータの重要性を認識することが重要です。また、データに関する理解やスキルを向上させていくことでデータ活用の効果をより高めていくことができます。
そのためには、データ活用に関連する評価基準や報酬体系の構築、データ活用に関する教育体制の強化が必要となります。
以上の取り組みを総合的に行うことで効果的なデータマネジメントを実現し、データ活用の成果を最大化することができます。
データマネジメントの強化を効率よく進めるための3つのポイント
データマネジメントの強化を効率よく進めるためには、以下のようなポイントがあります。
トップのリーダーシップ
データマネジメントの強化は組織全体の取り組みが必要であり、経営層のリーダーシップが重要です。経営層がデータマネジメントを戦略的に取り組み、組織全体にその重要性を伝えることがデータマネジメントの推進につながります。
スモールスタートから始める
データマネジメントのための大規模なシステムの導入や人材の採用、育成には高いコストが発生します。当然、うまくいかなかった時のリスクも大きくなるためまずは小さな取り組みから始めることが望ましいです。たとえばマネジメントするデータに優先順位をつけて重要なものから整理する、あるいは大規模なシステムを必要としないプロセスの改善から行うなどです。
スモールスタートから始めることはリスクを低減できるだけでなく、素早く成果を実感することができるため、データマネジメントの重要性を組織に認知してもらうことにもつながり、データマネジメントを進めやすい環境をつくることができます。
データ活用人材の育成
データマネジメントを推進するためには、データに関する知識を持った人材が必要です。プログラミングなどの専門的な知識を一から教育することは難しいかもしれませんが、データをビジネスに活用していくための分析スキル、ビジネススキルは組織全体で身につけていけるような環境を整えることが望ましいです。
データ活用スキルを見つけるための研修や、社内のオペレーションにデータを活用できる体制を構築するサポートを提供している企業にも様々な種類があるため自社にあったサービスを探してみましょう。
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