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【飲食店のデータ分析事例】売上減少の原因を見極め、対策を打つ

【飲食店のデータ分析事例】売上減少の原因を見極め、対策を打つ

この記事では、弊社が実際にコンサルティングした事例をもとに、売上減少の原因を見極め対策を打つデータ分析のやり方や考え方を解説します。

売上が下がっている原因を分析する

今回は「カフェB店」の事例をもとに、売上が下がっている原因を洗い出すデータ分析を解説します。

Case Study
駅前立地にあるカフェB店では、半年ほど前、近隣に某カフェチェーンのZ店が出店した頃から売上高が減少傾向にあります。そこで、データ分析により何がZ店に劣っているのかを明確にし、その部分に対して打ち手を構築することで、売上減少を食い止め、再度売上増加へと改善していきたいと考えました。

データ分析は、下記の手順に沿って行います。

データ分析の手順
  1. 目的の明確化
  2. 仮説の絞り込み
  3. 分析方法の定義
  4. 情報(データ)の収集
  5. 分析

手順の詳細は「正しいデータ分析の手順とは?成果につながる5つのステップ」で解説しています。

1.目的の明確化

このケースにおける目的は「売上減少要因を見極め、売上増加施策を構築する」ことです。

2.仮説の洗い出しと絞り込み

競合Z店の出現により売上が減少したという事実に基づき、ロジックツリーを使って仮説を洗い出します〈図表1〉。 (ロジックツリーや、課題と仮説を洗い出すための考え方は「問題解決に欠かせないロジカルシンキングのやり方」で詳しく解説しています。)

図表1 このケースにおける仮説

図表1 このケースにおける仮説

売上高は、「売上高 = 客数 × 客単価」で表されます。「何人のお客様がいくら買ったのか」というように、客数と客単価に分解して考えていきます。今回は、「競合店に商品力で負けているため、既存顧客を取られたことによって売上が減少している」という仮説が有力であろうと当たりをつけました。

3.分析方法の定義

以下の2つの視点で分析を行います。

1.売上減少要因の見極め
→ 客数および客単価のどの部分で売上が減少しているかを明確にする
2.競合店舗との競争力の比較
→ 競合店舗と比較した際の商品力の優劣を明確にする

4.情報(データ)の収集

「各店舗の収益状況の確認」「各要素に必要な施策の整理」のため「各店舗のP/L推移」を使用します。

5.分析 /「収益管理」のデータ分析

ここからは、実際にデータを整理し分析していきます。

(1)現状確認

まずは、大きな傾向をつかむため、実際にどのように売上が減少していっているのかを見てみます。

今回は「競合店舗が出店してきたことにより売上が減少している」という問題が発生しています。したがって、まずは実際にいつから売上が減少してきているのか確認します。その際に、図表2のように、月ごとに前年対比を表すグラフを作成すると、売上高が前年と比較してどのように変動しているかがわかります。

1月までは前年対比が100%を超えているのに対し、2月から減少傾向へと転じていることがわかります。

図表2  B店の月別の売上高前年対比推移

図表2 B店の月別の売上高前年対比推移

(2)売上の減少要因を深掘り

売上高を客数と客単価に分解して、前年対比を見てみます。図表3の客数と客単価の推移を見ると、客単価に関しては、前年対比を常に上回っているものの、客数に関しては、11月以降は減少しています。

図表3 B店の月別の客数・客単価推移

図表3 B店の月別の客数・客単価推移

その結果、売上高としては、2月には前年対比を下回る結果になっているようです。 よって、売上の減少要因は「客数の減少」であることがわかりました。

客数についてさらに掘り下げていきます。

(3)客数減少の原因を明確にするデータ分析

B店の売上減少の要因である客数減少の理由を細かく見ていきましょう。

朝の出勤前やお昼時、あるいは営業の合間や帰り道。いろんな場面で気軽に訪れることができるのがカフェです。カフェは時間帯によってお客様の層が変わることが多い業態です。朝方は出勤前のサラリーマンが多いですが、お昼時は軽食で十分という女性客でにぎわっています。競合店舗が出店したことにより客数が減少しているため、その中でも特にどの顧客層が減少してしまっているのか分析する必要があります。

そこで、客数の減少要因を分析するために、時間帯別の客数を調べる「実地調査」を行いました。競合店のZ店が出店して以来、客数が減少し始めていたので、自店舗と競合店舗の両方で時間帯別の客数を調べました。

その結果、図表4を見ると、日中は競合店舗であるZ店と比較して、自店舗B店は客数が取れているといえます。

図表4 B店とZ店の時間帯別の客数

図表4 B店とZ店の時間帯別の客数

早朝の時間帯に関しては、Z店と比較すると、パンのみを注文する客数が少ないことがわかります。

また、夜の時間帯に関しては、Z店と比較すると、18時台から19時台の客数が極端に減っています。Z店は20時台にも客数がとれています。B店が20時に閉店してしまっているのもひとつの課題といえそうです。

このように、競合店舗と比較し、時間帯別に客数をカウントすることで、客数減少の原因がより詳細にわかり、適切な解決策を導き出すことができます。

(4)客数増加に向けた施策の構築

日中の時間帯は問題なく客数が取れているということから、早朝や夜の時間帯に客数が減少する原因は、立地条件や接客などによるものではないということが想定されます。 一方、早朝にはパンのみを購入する客数が少ないため「商品の品揃え」に課題があるのではという仮説が立ちます。

次に、図表5のように、早朝と夜の時間帯におけるB店とZ店の品揃えの比較をしました。

図表5 B店とZ店の品揃えの比較

図表5 B店とZ店の品揃えの比較

パンの品揃えについてZ店と比較すると、B店は早朝では半分未満、夜でも3分の2程度の種類しか揃っていないことがわかります。特に早朝においては、パンのみ注文している客数が特に少ないため「パンの品揃えを強化する」ことで、客数の増加が図れるのではないかという仮説が導き出されます。

(5)仮説は実行して効果検証する

データ分析により、次の事実が把握できました。

  • 売上減少の要因は客数の減少
  • 客数減少は、早朝と夜の時間帯で起こっている
  • 夜の時間帯においては、20時台の営業をしていない
  • 特に早朝の時間帯においては、パンの品揃えが少ない

打ち手の実施 / 課題となっていた集客数を改善

今回のケースで導き出された、「早朝の時間帯におけるパンの品揃え強化により、客数増加が図れる」という仮説を検証していきます。実際に、早朝のパンの品揃えを増やし、店内外においてパンを訴求するPOPも出しました。

そしてその結果、早朝の7時台~9時台の客数を50人近く増やすことができました〈図表6〉。データ分析から導き出された仮説は正しかったということになります。

図表6 品揃え強化の検証❶

図表6 品揃え強化の検証❶

なお、同様に夜の時間帯(18時台~19時台)においてもパンの品揃え強化を行ったところ、図表7に示したように、早朝と同様、施策の実施前と比較すると30人近くも客数を増やすことができました。

図表7 品揃え強化の検証❷

図表7 品揃え強化の検証❷

このブログでは今回ご紹介した記事の他にも様々なデータ分析の事例を解説しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

【出典】齋藤健太.問題解決のためのデータ分析

※この事例では、商品名などは伏せているほか、実態から大きく外れない範囲で数値データを加工していますが、実際に近いケースを扱うことで、この記事をお読みのみなさんが現実感を持ちやすく、現場のニーズを当てはめやすいものとなるよう構成しています。

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